2023年度事業総括報告
■FoundingBaseの考えるまちづくりとは?
<2023年度の方向性>
今年度のFoundingBaseは、改めて「まちづくり会社として何を目指すべきか」を考えた1年だったと思います。今年度は21の拠点で30の事業に取り組ませていただき、大きく目標を達成した事業もありましたが、まちづくり会社としてはそれぞれの価値をどう「まち全体」と接続させるかを考えなければなりません。ただ地域をフィールドに事業を行うのではなく、その先でどのように地域の価値を高めていくのかを思考し、仮説を置いた上で各事業戦略を落とし込んできました。また、下期はR6年度からR8年度までの中期計画を発表し、その準備としての半期と位置付けた上で、上期の事業成果を見ながら「まちづくり会社としてエリア価値の向上に繋がっているか」を考えつつ、一方で営利企業としてしっかり利益を上げられているかも確認して事業を進めてきました。
<なぜそれを目指そうとしていたのか>
FoundingBaseは 「自由」をUpdateする をミッションに掲げる会社です。この「自由」は、「自分に由る」という意味で捉えており、「自由」をUpdateするとは、「社会に自らに由る主体的な選択・行動を増やしていく」ということ。それは個人に始まり、その集合体としての組織に展開されていきます。このような個人が集まるまちは、様々な課題を抱えていても解決に向けた前向きな行動を起こしていけると考えています。
こうしたまちになるために必要なことは、これまでの文化・慣習を踏襲して過去の延長の上で「その地域らしさ」を捉えるのではなく、今その地域に関わる人たちとともに、過去を踏まえた上で未来を見据え、主体性を持って「その地域らしさ」をアップデートしていくということ。我々も地域の行政や住民と「自らに由る意志」で不確実なチャレンジを行うことで、今の時代に本当に求められる地域の価値を共創することができると考えています。
我々は"「自由」をUpdateする"というミッションの下で、常に自分たちの事業やサービスを磨きながら、地域の価値向上に向けたチャレンジを行なっていきたいと考えています。
<数字で見るR5年度FoundingBaseのまちづくり>
FoundingBaseの活動拠点数・従業員数の変遷になります。
令和6年度終了時点では40拠点となる予定です。本当に多くの自治体様、地域の皆様、社員の仲間に恵まれて成長することができました。
詳細は後述しますが、令和5年度においては観光事業で福岡県朝倉市、島根県海士町、高知県大月町で新たにアウトドア事業の運営がスタート。大月町は期中に施設改修に入りましたが、福岡県朝倉市(杷木松末アウトドアヴィレッジ)と島根県海士町(TADAYOI)はともに当初予算を大きく上回る結果を残すことができました。
道の駅事業では高知県東洋町「海の駅 東洋町」の指定管理を受託し、運営初年度で過去最高の売上を記録。
スペース&ツアー事業では北海道美幌町、熊本県あさぎり町でスペース運営を開始。北海道美幌町(KITEN)は令和4年度から設計業務に携わっており、無事に施設オープンを迎えて運営においても大きな成果を残すことができました。
教育事業においては茨城県大子町、福井県美浜町で新たに取り組みを開始しています。茨城県大子町(ことのば)では魅力的な教育づくり支援を。福井県美浜町(放課後教室サン)では子どもたちの挑戦を後押しする体験学習支援を提供しています。FoundingBaseとしても初の取り組みとして、「日本一の公教育を目指す町」安平町で教育関係者・自治体関係者を集めた「あびら教育フォーラム」を開催し、まちづくり×教育の可能性を追究することができました。
シティプロモーション事業では、北海道美唄市の取り組みをまとめたコンセプトブックが日本地域情報コンテンツ大賞2023 地方創生部門の最優秀賞にあたる内閣府地方創生推進事務局賞を受賞。移住者にフォーカスしたYouTube番組「挑む移住者たち」はチャンネル登録者数3,000名を突破することができました。
事業の変化に合わせて、組織の変化も大きかった1年。代表のバトンを山本賢司が受け取り、新たに安藤友之が取締役に就任。令和6年度からは社外取締役に株式会社オールアバウト 代表取締役社長兼グループCEO 江幡哲也氏も迎えて中期経営計画の達成に向けて経営チームをはじめ社内体制の強化を図っています。
事業の意義を言語化し、価値を指標化する。成果にコミットするまちづくり会社として、令和6年度以降も各地で様々なチャレンジを続けたいと思います。
■各事業部の事業報告
<観光事業部>
観光事業部の事業MISSION
なにもない、誰も知らないと言われるような場所にもその地ならではの資源があります。そんな地域の資源を活用して魅力を高めることで、訪れた人々に価値を感じてもらえるような体験を提供しています。結果として、その価値を求める交流人口を増やすことで、エリア価値を高めて地域活性化へと繋げていきます。
観光事業部の今年度のまちづくりアプローチ
今年度は運営に携わる大分県豊後高田市の長崎鼻ビーチリゾートに加えて、全国で合計3つの施設の開業と事業立ち上げを実施。島根県海士町の「海士グランピング”TADAYOI”」と高知県大月町の「大月アウトドアフィールド”KASHINISHI”」、民間協業となる福岡県朝倉市の「杷木松末アウトドアヴィレッジ」。
施設ごとに海沿い、林間や離島などの特有の事業環境を活かしながらアウトドア事業を形にしていきました。拠点を横断した運営手法の仕組み化による安定したサービス提供と、顧客ひとりひとりに寄り添って経験価値を高める接客手法の確立を行いました。
2023年度度観光事業部総括
今年度は、運営ノウハウやPR手法を他の地域の新規開業に活かすことで、立ち上げから3年間かかって築き上げたオペレーションや売上規模を初年度から実現することができました。今後も事業立ち上げのスピード感を高めることで、よりスムーズにまちの交流人口の創出に繋げていきます。
また、顧客に寄り添って体験アレンジを重ねていく中で、気づくことができた新たな課題としては、地域資源の魅力の高め方はエリアの特徴や商圏に応じて異なること。来年度以降は、その地の資源を最も価値の高い状態でお客様にお届けするために、ハコモノの運用にとどまらず、地域資源の魅力の磨き上げに取り組んでまいります。
<道の駅事業部>
道の駅事業部の事業MISSION
道の駅(直売所)に出品される地域産品の価値の最大化を図ることで、新鮮な産品が揃う魅力的な道の駅(直売所)づくりを行い、地域内外の方が訪れる場所としていきます。
来訪者による購買行動により、地域産品の生産者の収益の向上や地域経済への貢献を目指しています。
道の駅事業部の今年度のまちづくりアプローチ
今年度は高知県東洋町「海の駅東洋町」と大分県豊後高田市「玉津まちの駅 夢むすび」にて事業を展開しています。 鮮度と品揃えにこだわった運営方針を掲げ、店舗の魅力化を行っていきました。
また、施設内の加工場の機能を活用し、地場産品の加工販売なども推進。直売所間の産品連携や、さらには地域でのイベント出店など、地域の産品を地域外の方に知っていただく活動も積極的に取り組みました。
2023年度道の駅事業部総括
今年度は多くの方に施設をご利用いただき、売上は過去最高となり、地域の経済活動へ一定の貢献ができたと捉えています。しかしながら、さらなる地域経済発展のためにはより一層の取り組みが必要だと感じています。地域の生産者様の新鮮な産品が数多く揃う直売所機能を磨き上げることに加え、6次産業化の拠点や地域商社の役割も担うべく、産品の加工や流通に関しても来期注力をしてまいります。
<ふるさと納税事業部>
ふるさと納税事業部の事業MISSION
今年度は京都府宮津市、北海道富良野市、静岡県南伊豆町にて活動を行いました。拠点に移り住んで活動する当社の特徴を活かし、現地でふるさと納税の商品開拓やPR、観光客などに対するオフラインでのふるさと納税スキームなどを構築いたしました。
2023年度ふるさと納税事業部総括
これまでまちの外からふるさと納税をご支援される企業は多くいらっしゃいましたがまちの中からふるさと納税を支援する企業はまだまだ少ない状況でありましたので自治体様からも評価をいただきながら、ふるさと納税寄付額向上にも貢献することができました。
来期は、商品開発や事業者様との調整などのふるさと納税のフロント部分に加え、ワンストップ対応などにも関わらせていただく拠点も増え、より一層自治体様や地域の皆様と密な関係を構築し、ふるさと納税を通じた地域づくりを行ってまいります。
<スペース&ツアー事業部>
スペース&ツアー事業部の事業MISSION
地域内外のヒト、モノ、情報が行き交うスペース運営を通して、地域の課題が自然と集積される場作りを実践。そこで可視化された地域のニーズを新たなコンテンツとして共創、ツアーやイベントに形を変えることで地域内外との新たな接点を築きます。このスペース運営とツアー実行の好循環を描くことで、絶えず関係人口を築くプロセスをまちにもたらすこと、そして潜在的だった地域のニーズや課題が検証され自治体にフィードバックすることで、まちづくりに貢献することを事業部MISSIONとしています。
スペース&ツアー事業部の今年度のまちづくりアプローチ
今年度は京都府宮津市のクロスワークセンターに加え、北海道美幌町のKITEN、熊本県あさぎり町のALOTでのスペース運営が開始されました。また福島県国見町ではオーナー制度を主軸としたクニミノマド事業を手掛けます。
多くの方が利用する施設へと成長することで、多様な世代、多様なアイデアが行き交い、結果、利用者にとって施設を知る⇒訪れる⇒活用する⇒自らコトを起こすといった、質的な変化を促す場としてスペースが機能することを知見として得られました。
実に各施設で年間に150以上ものイベントやツアーが実施されるといった、極めて生産的なまちづくり活動の場へと発展。遊休化してしまった地域の施設を再生するための汎用性の高いまちづくりモデルとして、さらに再現性を高める取り組みを今後も継続します。
スペース&ツアー事業2023年度総括
スペース運営に注力し課題が集まる場作りを実践できた一方で、地域外との接点を創出する取り組みは後手に回ってしまったという課題もあります。地域内外の人材が混ざることで関係人口を創出するプロセスの循環を回し、来年度は地域外からの人流を意図的に創ることを目指します。
そして本事業の提供価値が、地域のニーズや課題を可視化しまちへと還すことであると改めて定義することで、まちにとっての公共的なプラットフォームへと進化したいと考えます。担い手不足、人口流出、若年層の愛着不足、空家問題、遊休地の拡大、こういった全国で共通する地域課題と人材のマッチングを促し、地域という選択肢を提供することがスペース&ツアー事業を通したまちづくりへの貢献だと考えます。
<教育事業部>
教育事業部の事業MISSION
教育事業部では、挑戦機会を創出することで子どもに体験学習の機会の創出を行うこと。そして子どもたちの挑戦がまちへと伝播し、まちの挑戦の総量を増やすことを目掛けて取り組んできました。ひとの成長が、まちの成長につながり、まちづくりへと発展していくこと。また自分の可能性を信じて行動できる人を育むことで、地域に対して教育という側面からまちづくりへと貢献してきました。
教育事業部の今年度のまちづくりアプローチ
事業MISSIONを踏まえて今年度は、「体験学習」にフォーカスし、子どもの非認知能力(学力のように測定できる能力だけではない能力)の向上を目掛けて取り組んできました。
地域だからこそできる体験の創出と自分自身のキャリアや興味を開発する授業を行うことで、子どもの学習意欲を高めること、結果として学習や探究的な学びに紐づく授業カリキュラムの開発を行ってきました。
全国8拠点で運営をおこなっている公設塾では、PBL型の授業や探究活動を実施。子どもたちの挑戦を後押しすることで新しい気づきや発見をもたらしました。またコーディネーター業務として学校の中に入り、学校の総合的な学習(探究)の時間のプロデュースを実施しました。
2023年度教育事業部総括
FoundingBaseでは、学習支援、興味開発、プロジェクト型学習などさまざまな商品メニューを持ち、自治体の皆様のニーズに合わせた教育事業を展開してきました。
今年度は、それぞれ取り組んできた事業を改めて整理・分解し、より再現性の高い教育を目指し取り組んできました。新たに2拠点の立ち上げに加えて、授業のやり方や生徒の変容についてこれまで経験や勘で行ってきたことを言語化し、体系化することで、多拠点での挑戦機会の創出を行うことができました。
今後も多くの地域で子どもたちのやりたいを追求し、まちと関わり成長できる教育環境づくりを行なっていきたいと思います。
<シティプロモーション事業部>
シティプロモーション部の事業MISSION
地域価値の共通認識を共創する地域の価値を可視化し、地域内外に向けて発信することがシティプロモーションの取り組みですが、その中で特に重要なのは、行政や市民を始め地域に関わる様々な方とともに地域の価値の共通認識を創ることだと考えています。どれだけ素晴らしいモノ・コトがあろうとも、「それこそが我がまちの価値である」と一人ひとりが思わなければ、地域の価値にはなりません。関わる方とまちの価値を共創・共有し、それを内外に拡散していきます。
シティプロモーション事業部の今年度のまちづくりアプローチ
今年度は北海道安平町・北海道美唄市・北海道富良野市・福井県美浜町で事業を展開しました。地域の情報を扱う中で「そのまちの価値」について思考を深めながら、シビックプライドの醸成と関係人口の増加を目指して、様々な形での情報発信を行ってきました。コミュニティチャンネルや広報誌、SNSなどのメディア活用はもちろん、地域を具体的に変えていく方法を話し合うワークショップの定期開催やコミュニティスペースの運営、ツアーの開催なども合わせて行いました。
2023年度シティプロモーション事業部総括
美唄市の取り組みでは日本地域情報コンテンツ大賞の内閣府地方創生推進事務局賞を受賞。市内認知度も50%を超えるなど、まちの方向性や魅力の拡散に貢献できたと考えています。安平町や富良野市のメディア運用にも高い評価をいただきました。一方で、シティプロモーションの価値は見えにくく、変化実感が得にくいことは課題の一つと考えます。新年度は新たな指標を設け、それぞれの価値ある情報が狙った効果を出せているかを評価をしつつ、思い切った試みも行なっていきたいと考えています。
■2023年度全社総括
令和5年度を振り返ると、企業としては着実な成長を遂げているものの、中身を見れば事業・組織の両面での課題が見受けられたと思っています。
事業面では様々な事業や価値を創出することができたと考えますが、一方でまだまだ各自治体毎に取り組む業務コストは高い。それぞれの地域で行う事業・業務を型化し、他の自治体とも連携しながら、型化した業務を「その地ならではの価値」に転換できるようにしていきたいと思います。幸いにも様々な自治体とのコミュニケーションが増えてきていますが、各自治体とは業務の細かい進め方やノウハウを話すだけでなく、「その事業はどんな成果を目指し、その結果どのような地域価値が生まれるか」の大きな共通認識を作りながら議論を進め、また実際に事業を作る上ではFoundingBaseで繋がる様々な自治体と協働できるような体制を構えて、令和6年度の事業に挑みたいと思います。
組織面では地域で活動するメンバーがより働きやすくなるような支援体制の構築を進めてきましたが、我々の力不足もあってまだまだ行政や地域と考え方や方向性を揃え切ることができず、ご迷惑をおかけした部分もあったと思います。そうした反省はしっかりと次の事業戦略に落とし込み、またそれぞれの取り組みで地域価値の共創を行なっていきたいと思います。
FoundingBaseは2024年2月28日で10周年を迎えました。11期目となる令和6年度は次のステージに歩みを進め、地域社会・日本社会の価値向上に大きく貢献するまちづくり会社となれるよう、真っ当誠実な姿勢で日々の業務に向き合っていきたいと思います。