見出し画像

夢むすび おせちプロジェクトを終えて

皆さんこんにちは、大分県豊後高田市で玉津まちの駅「夢むすび」と言う地元野菜の直売所を運営している藤原ネマニ蓮美です。

この夢むすびは、2020年8月から正式にFoundingBaseが運営主体となりました。現在は直売所の他、地元の農産物を活用した加工品作り、新たな取り組みとしてマルシェの運営を行っています。
その「夢むすび」において伝統行事となっているのが、おせち事業です。
昨年末で8年目を迎えたおせち事業では、3つの加工場、およそ14名の製造者と協力して400セット以上の開発・販売を実現しています。
その名も『豊後高田市 手づくり万菜おせち』。

無事におせちプロジェクトを終えた今、振り返りの意味も込めて関係者にインタビューをしながら綴っていきたいと思います。

おせち事業のこれまで

まずは、このおせち事業の歴史を紐解くために、元夢むすび店長 東名美智子さんからお話を聞きました。

画像1

東名さんは夢むすびの店長として立ち上げから10年間運営に携わってこられました。おせち事業に関しても第1回目から関わっており、この事業の先導者として毎年様々なを工夫して、お客さんにより美味しい、安全でより新鮮なおせち体験の提供に取り組んでこられた第一人者です。

Q:おせち事業の立ち上げの経緯は何だったんでしょうか?
10年前に西原くんという市役所職員さんが豊後高田市農漁村女性集団連絡協議会(現在豊後高田市AFFネットワーク)「夢むすび」を立ち上げた頃に、地域の食材を凝縮したおせち作りを構想していたんです。2年後でGIAHS(世界重要農業遺産システム:Globally important agriculture Heritage Systems) の交付金を活用させてもらって、2012年度にようやく第1回目の実現にこぎつけました。
高田にある加工場5件(夢むすび、荘園ほたる、コットン村、レンゲ、とちいバス)の調理人20名を招待して、おせち会議をスタート。ひとり20〜30品を次回会議に持ち寄ることに。次の会議では、実際に持ち寄られた90品を一つ一つ味見しながら30品ほどに商品を絞っていきました。外部アドバイザーからもたくさん意見をいただいて、結果として2つの商品化(16品の『昭和』、20品の『豊後』)を決定。
こだわった条件としては2つ。
一つは、豊後高田産・国東半島産の原材料を活用して”手づくり”で製作すること。そして、常温包装のおせちに仕上げることでした。
大変だったのは、「おせち」としての視覚情報まで含めたクオリティ管理。調理に関しては自信がありましたが、盛付けデザインや箱づくりなどの経験はありません。試行錯誤を重ね、初年度は300セットを製作。
毎年毎年同じように創意工夫を重ね、これまで培ってきたものをUpdateし続け、おかげさまで8年間続けるこができたと思っています。
特に事業初年度から購入いただいているお客様、応援してくださっているまちの方々には感謝しかありませんし、今後も継続していきたいと思っています。

Q:8年間積み重ねていく中で、心がけていたことはなんですか?
実は必ずお客さんにアンケートを送っていて、フィードバックをもらえるようにし続けています。また、皆さんからいただいた「ありがとう」という言葉を、スタッフにも共有して励みにしてきました。
製作過程においては、故郷の味を大事にしつつ、新しいものを開発していくことは意識していますね。
実はいっとき700セットの製作に踏み切った年がありました。
製作キャパシティを超えてしまい、味のクオリティが落ちてしまったと反省しています。実際、その年のアンケートで厳しいお言葉もいくつか頂戴しました。
あらためて初心にかえり、「おいしかった・思い出になった・ありがとう」と言っていただけるように、材料が新鮮で美味しいおせちづくりにをベースにしながら、キャパシティや生産性の向上に努めています。

Q:おせち事業を見てこられた中で、一番の変化はなんですか?
やっぱり、蓮美ちゃんをはじめFoundingBaseが入ってきてくれて、新しい観点でおせちをUpdateできていること。これまで大事にしてきたものは引き続き中心に据えつつ、世代や時代にあった観点を加味して夢むすびのおせちを次世代に繋げてくれているので、安心感があります。これからの展開がますます楽しみになってきています。

画像2

※2014年度のおせち事業

東名さんは未経験者の多い今回のおせちプロジェクトにおいても、多くのご指導をいただき、支えていただきました。
あらためて、歴史ある事業を受け継いだ責任を受け止め、未来に繋ぐ覚悟を持つことができたと感じています。本当にいつもありがとうございます。

FoundingBaseとして綴る、新しいチャプター

先述の通り、今年度から正式にFoundingBaseが夢むすび事業の運営主体になりました。2020年8月に事業委託を受け、夢むすびの全ての事業運営を担っています。
年末のおせちづくりにおいても、東名さんを中心にご指導いただきながら、しっかりバトンを受け継いで製作・販売を手掛けました。

iOS の画像 (80)

※写真左から、古賀・矢田・東名・河野・勝畑・藤原・串田・夏川戸

夢むすび事業の歴史や想いを未来に紡ぐ取り組みが本格的にスタートした瞬間でもありました。
今年度のおせちづくりで取り組んだのは、大きくは3つあります。
① 製作工程のUpdate
② デザインのUpdate
③ 販売方法のUpdate
  です。

■ 製作工程のUpdate
今年のおせちづくりは7〜10名体制で実施。
東名さんを中心とした、夢むすびに関わり続けて下さっているスタッフ方。
20代の都心からの移住者。そして私たちFoundingBaseメンバー。
とても多様なグループの集まりでした。
夢むすびではおせち20品のうち16品の製造を担当。
はじめて関わる者も多く、プロジェクト始動期は完成に向けた製作工程の共通認識が持てずに苦労しました。

そこで私たちが最初に取り組んだのは、調理工程の見える化です。
経験者を中心に調理を担ってもらい、そのプロセスを観察したり実際にインタビューをして経験者の暗黙知の言語化を図りました。
結果的に、原材料の仕入れ/原価計算〜製造の工程を分解でき、担当ごとに具体的なミッションを設定。そのミッションの前後のつながりまで一覧化されたことで、プロジェクトメンバー全員で完成までの共通認識を持つことができました。

画像4

※調理製造予定表とタイムライン

画像5

※調理日報による細かな日々の改善

■ デザインのUpdate
次に改善したのはデザイン領域です。
新しい世代に関心を持ってもらうために、FoundingBaseのLXデザインteamの力を借りてターゲットとコンセプトを改めて整理。デザインを刷新しました。

デザインに協力してくれた宮本麻里奈にもインタビューしました。

Q:おせちのデザインを進めていける中で大事にしていたことはありました?
このプロセスの中で一番大事にしていたことがメッセージ性と統一感です。こんなコロナの時期だからこそ、メッセージ性を強く持ちたいと思いました。皆が漠然とした不安を感じている時期に、作り手・生産者側から想いを込めて贈り物をするようなクリエイティブにしたい。

「地元に戻ってきたみんなで。今年は直接会えなかった遠くのあの人に。
 世代を超えて場所を超えて。」

手にとった媒体を開くと、すぐに作り手STORYとしてメッセージが目に入るような体験づくりを心がけてみました。

おせちに同梱した食材マップも、ちょっと手にとって読んでみようと思える親しみやすいデザイントーン設計と、最低限の情報だけをブラッシュアップして見せる、シンプルさを意識。
急にスタイリッシュになりすぎてもハレーションが起きるので、これまで対象にしてきたシニア層を置いてけぼりにせず、且つ、若い層にも興味を持ってもらえるような中間トーンをイメージしました。

画像6

画像7

■ 販売のUpdate
今までのおせち事業では一定数のリピート顧客に支えられてきたこともあり、販売フェーズにおいてそれほどPRをしてきませんでした。
昨年も新聞取材とふるさと納税だけの反響で、販売目標(調理目標)400セットに対して450件の注文をいただいたくらいです。
しかし、今年はコロナという大きな変化があったため、”例年と違う年末年始”を過ごす人が大半。そのため、販売戦略にいおいても工夫が必要だと考えていました。

実際、予約受付け当初は例年よりも受注ペースが非常に悪かったです。
「今年はコロナで子ども/孫が帰ってこない」という声も多く届きました。

状況も状況。待っていても注文は入らない。そこからは販売担当の串田を筆頭に全員で顧客探しのスタートです。
新聞取材、ローカルテレビの取材の設定はもちろんのこと、地道にSNSで拡散し、顧客リストを片手にひとりひとり連絡をさせていただくなど、想いを込めたおせちを届けるために愚直に行動を続けていきました。

結果として、このコロナ禍でも無事に430セットを販売し切ることができました。

今年度よりFoundingBaseメンバーとして夢むすび事業に携わる串田に、販売フェーズの苦労や達成感を聞いてみました!

Q:初めての豊後高田おせちの経験を振り返ってみるとどうでした?
歴史あるおせち事業をしっかりと次世代に紡ぐスタートの年という位置づけで、使命感とともにプレッシャーもありました。私を含め未経験者も多く最初はバタつきましたが、「おせちを通じて歴史を紡ぐ」という目的に向かって、現場で私たちとパートさんが一体になって動くことができた。おせち事業を通じて、活気あるチームになれたと感じています。

Q:これまではあまりプッシュ型の施策を講じてきていない中で、今回の一番の挑戦はどのあたりにありましたか?

色んな仮説はたてられるものの、過去のFACTデータが無いため施策の成果インパクトをはかるのが難しかったところです。
また、実質1ヶ月ちょっとという限られた期間の中での販売のため、仮説を検証する時間も多くない。
だからこそ、割り切って「やるべきこと、できることは全てやる」という気持ちで施策の数を重視して行動しました。

Q:難しいと思ったポイントはありましたか?
やっぱり新規顧客の開拓です。既存顧客からの購入が多かったものの、今年は思うように注文数が伸びなかったので。

Q:今回の取り組みを通じて、次回以降どのような工夫が必要だと思いましたか?
あらためて、「誰に、どのような商品を、どう届けるか」を考えたいです。
やっぱりこの豊後高田おせちには、色んなストーリーがあります。これまで豊後高田おせちに携わってくれた方々の色んな想いが乗っかっています。
バトンを受け取った私たちが、おせちという「モノ」だけでなく、そのストーリーを届けたい。そして、おせちを食べる「体験」をUpdateさせたい。
その一連の流れを設計して、あらためて商品開発に臨みたいと思っています。

Q:地域との協働という観点ではいかがでしたか?
販売施策の中で、やっぱり地域の方々の力を借りることは多かったです。
地元の高田高校の同窓会グループにおせちの案内を配ってもらったり、地域の区長さんに依頼して回覧板に入れてもらったり。おせちを通じて夢むすびが世代交代していることを知ってもらういい機会にもなりました。

画像8

※串田が佐々木市長に正しい盛り付け方をレクチャー(笑)

高田の食と人を紡ぎ、未来へつなぐ

図らずともコロナによって時代は大きく変化しました。
「自由」をUpdateする
私たちFoundingBaseのMISSIONです。
「自由」とは、「自らに由る」ということ。
豊後高田市に限らず、私たちが活動する地域においてもとても重要だと再認識するプロジェクトとなりました。
自らの意志で選択できるよう、できることを増やす。
できることを増やすためにも、変化=Updateを怠らない。

大きな責任とプレッシャーのもとバトンを受け取ったおせち事業でしたが、必ず私たちがUpdateした状態で未来に繋げてきます。
その実現に確信が持てた、今回のプロジェクトでした。

2021年の年末には、更にパワーアップしたおせちを皆さんにお届けします!

画像9

最後に、プロジェクトメンバーからも一言もらっているのでご覧ください!

河野さん:
豊後高田に住んでいても知らなかった食材や調理方法がいっぱいあったことが学びになりました。そして、おせちは1年かけて準備・開発されていることに驚くとともに、携われてとても楽しかったです。

古賀さん:
これまで自分でおせちを作ったことなかったですし、買ったこともありませんでした。今回参加して、全て国東半島産のもので作れるとはとてもびっくりしたし、勉強になりました。おせちを、こんなに身近に感じるとは思わなかったです。

矢田さん:
20代の人たちと一緒に調理できること、また、新たな働き方ができて楽しかった。気楽でありのまま活動できることは、自分の中でとてもバランスの良い生活ができました。

勝畑さん:
私は高田に移住してきて早速おせち事業に関わらせていただいて、おせちと言う今まで遠い存在のものが身近に感じました。今までおせちはもっと渋くて堅苦しいものだと思っていたら、意外とそうでもなかった。そのおかげ、私のおせちに対してのハードルが下がって愛着が沸くようになった。