山口県阿武町で運営する公設塾「あぶスタ」では、2026年6月末から7月末にかけて、「数検対策講座」(全9回)を開催しました。
今回参加したのは、小学5年生から中学2年生までの12名。7級から4級まで、それぞれが自分の目標とする級に挑戦し、7月25日の数学検定本番に向けて学習を進めました。
数検対策講座と聞くと、「検定に合格するために、たくさん問題を解く講座」を想像するかもしれません。
もちろん、合格も大切な目標の一つです。
一方で、今回の講座で私たちが大切にしたかったのは、合格するための知識だけではありません。
自分の現在地を知り、できないことを見つけ、自分なりに学習を調整していく。
数検という明確なゴールがあるからこそ、その過程を子どもたち自身に経験してもらいたいと考えました。
「何を勉強すればいいか」を、自分で分かるようにする
あぶスタでは、日々の学習を通して、学習内容だけでなく「学び方」そのものを身につけることも大切にしています。
子どもたちを見ていると、出された課題には一生懸命取り組める一方で、
「今の自分には何が足りないのか」
「次に何を勉強すればいいのか」
を自分で見つけ、学習を組み立てていくことには難しさもありました。
そこで今回の数検対策講座では、まず過去問を解くことからスタートしました。
目的は、単に点数を出すことではありません。
合格というゴールに対して、「今の自分はどこにいるのか」を知るためです。
さらに、一問一問について「この問題はどの単元の問題なのか」を整理できる分析シートを用意しました。

問題を間違えたときも、
「間違えた。次の問題へ」
ではなく、
「この単元がまだ苦手だから、ここに戻ってみよう」
と、次の学習につなげられるようにしました。
また、自分の理解度を「◎・〇・△・×」で記録。
目指したのは、たくさんの〇を集めること以上に、自分の中にある△や×を一つずつ減らしていくことです。
昨日まで分からなかった問題が、今日は分かる。
×だったものが△になり、最後には〇になる。
そうした小さな変化を、自分自身で実感できる学習を目指しました。
「分かりません」から、「ここまでは分かりました」へ
講座を続けていく中で、子どもたちの学び方にも少しずつ変化が現れました。
過去問を1回解いて終わるのではなく、分析シートを見ながら、
「1回目と2回目を比べると、この単元がまだ苦手だから今日はここをやろう」
と、自分で学習内容を決める子。
過去問とテキストを何度も往復しながら、必要な内容を探す子。
テキストに書いてあることをそのままノートに写すのではなく、図や表を使ったり、情報同士をつなげたりしながら、自分なりに整理する子も出てきました。
特に印象に残っているのが、小学5年生のIさんです。
講座の序盤では、まだ学校で習っていない単元もあって「難しい」と話していて、
間違えた問題の直しも、最初は答えを書き写して終わることがありました。
そこで、問題の答えだけではなく、「どう考えればいいのか」「分かったことをどう整理するといいのか」を一緒に確認していきました。
すると、Iさんからの質問に変化が。
最初のように、
「ここが分からないので教えてください」
ではなく、
「ここまでは自分でまとめてみたんですけど、ここからが分かりません」
と、自分がどこまで理解していて、どこから分からないのかを整理して質問するようになったのです。
一度考え方を伝えると、その後は自分で解けるようになる場面も増えていきました。

過去問の正答率も、最初の約20%から約66%まで伸びました。
もちろん、数字が伸びたことは嬉しい変化です。
しかし、それ以上に私たちが嬉しかったのは、その数字の間に、
「答えを写す」から、「自分で考え、整理し、必要なことを質問する」へ
という学び方の変化があったことでした。

答えではなく、次にも使える「考え方」を
講座で私たちが意識していたことがもう一つあります。
それは、目の前の一問を解けるようにするだけでなく、次の問題でも使える考え方を伝えることです。
例えば、分数の学習。
公式や計算方法だけではなく、
「そもそも分数は、1を何等分したうちの何個分なのか」
というところまで戻って考えます。
通分についても、単に手順を覚えるのではなく、「同じ大きさを保ったまま、1の表し方を変えている」と捉えてみる。

問題が変わっても使える考え方を少しずつ増やしていくことで、初めて見る問題にも、自分がすでに持っているものを使って挑戦できるようになってほしいと考えました。
「あとは、やるだけ」
そして迎えた7月25日の数検本番。
試験を前にした子どもたちからは、何をしたらいいか分からないというよりも、
「ここまでやってきたから、あとはやるだけ」
というような雰囲気を感じました。

過去問を解き、自分の現在地を知る。
できなかった問題を分析する。
必要なところに戻り、もう一度挑戦する。
そうやって、自分にできることを積み重ねてきたからこその姿だったのかもしれません。
今回の数検は、合否だけで終わるものではありません。
実際に、講座で経験したノートのまとめ方や振り返り方は、数検対策が終わった後の普段のあぶスタでの学習にも活かされています。
「100点」を追いかける前に、「できるようになった」を積み重ねる
今回の講座を通して、改めて感じたことがあります。
それは、勉強の楽しさは、結果そのものだけにあるのではないということです。
100点を取る。
検定に合格する。
もちろん、それらは嬉しい結果です。
しかし、その手前には、
「昨日できなかったことが、今日はできた」
という小さな変化がたくさんあります。
自分の現在地を知り、できないことを一つずつできるようにしていく。
その積み重ねの先に、結果として点数や合格がついてくる。
そんな学習を、これからも大切にしていきたいと思っています。
今回参加した子どもたちは、自分で数検に挑戦することを決めました。
そこには最初から、「頑張りたい」という気持ちがあります。
だからこそ、私たち大人の役割は、ただ「もっと頑張ろう」と伝えることではなく、その「頑張りたい」という気持ちが、実際の成長につながる環境をつくることなのかもしれません。

これからもあぶスタでは、一人ひとりの「できなかった」が「できた」に変わる経験を積み重ねながら、自分で自分の学びを前に進められる子どもたちを育んでいきます。
※この記事は2026年08月時点の情報です。
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