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塾長対談(高知県四万十町×岡山県吉備中央町)

高知県四万十町営塾『じゆうく。』​塾長の高橋沙希と、岡山県吉備中央町営塾『kii+』塾長の前嶋 英里との対談をお届けします。
公営塾の塾長として働く2人に公営塾を地方で運営する意義やコロナ禍における塾運営、そしてこれから公営塾が担うべき役割についてお伺いしました。


【前嶋】
沙希さん、今日はよろしくお願いします。はじめに簡単に自己紹介をお願いします!

【高橋】
高知県の四万十町で「じゆうく。」という公営塾で塾長をしています、高橋沙希と言います。私は四万十町で、公営塾の運営に関わり始めて、今年で4年目になります。
「じゆうく。」では地元の高校に通う高校生を対象にした塾としての活動、それから四万十町に2校ある四万十高校と窪川高校の魅力化事業を行っています。

【前嶋】
ありがとうございます。早速ですが、「じゆうく。」はkii+と違い高校生を対象にしていますが、kii+と同じく公営塾として四万十町で活動をしています。場所は違えど地方において公営塾を運営する意義はなんだと考えていますか?

▶地方で公営塾を運営する意義

【高橋】
公営塾として担うべき役割は様々ありますが、一番大切なことだと考えているのは、町そのものの力を高めることだと考えています。
塾というと教育の機会を届ける場所であったり、受験に向けて勉強する場所や最適な方法を届ける場所というイメージが強いと思います。
もちろん、その機能は公営塾にも備わっています。
ただ、それが唯一の目標になってはいけないと思います。四万十町のような地方都市は人口減少や高齢化など、複数の課題が同時に存在しています。そういった問題を解決する一つの手段として教育があると思います。
これは実際に四万十町で暮らす方々から聞いたことなのですが、四万十町の教育に対して保護者の方が明るい期待を抱けておらず、中学校に上がる段階で、親御さんが期待する教育の機会を求めて町外に出てしまうということがあったそうです。町の将来を担う子どもたちが、教育を理由に町外に出て行ってしまう。これは町の未来にとっては大きな損失です。教育はそういった意味でも町にとって非常に重要なことだと考えています。
そのため、「じゆうく。」では高校生のサポートだけでなく、幼稚園から高校を卒業するまでを「町の教育」と捉え、サポートできるような仕組みを考えていく必要があると考えています。

【前嶋】
なるほど。町の力ですか。これって吉備中央町も同じことが言えると思いました。吉備中央町は町内に公立高校がないので、町に住む生徒のほとんどは高校の時点で一度町を出てしまいます。そうなった時に、kii+や地元の学校での学びをより深めたり、地域との接続を高めていくことが結果的に町の未来のプレイヤーを生み出すことに繋がっていきますね。
「kii+」には積極的に町に繰り出している仲間もいて、地域と協働するからこそ作り出せる大きな価値を日々実感しています。生徒が直接、町内でご活躍されている方々の熱い思いにふれることが、より町を知り、町に対する思いを馳せるきっかけになればいいなと考えています。
先ほど小中高の連携についてお話があったのですが、そのような提案を町にするためには、かなり強い信頼関係を作る必要があると思うのですが、関係性の構築はこれまでどのようにしてきたのでしょうか?

【高橋】
町との関係性作りも本当に重要な要素の1つですね。これまで本当に苦労してきたことです。「じゆうく。」が四万十町に入って最初の年は、私たちの力不足の部分もあり、「じゆうく。」での進路指導のことで学校の先生方に不信感を抱かせてしまいました。
そこからは先生方や町の皆様との関係性の作り方を見直して、常に情報共有をしたり学校のお仕事を小さなことから手伝うなど、本当に小さなアクションを積み重ねてきました。何か派手なことをするのではなく、小さなアクションを積み上げていくことでしか関係性は築けないと考えています。これは四万十町だけでなく、どこの地方に行っても変わらないことだと考えています。

▶コロナ禍における塾運営について

【前嶋】
信頼関係の構築についてもう少し広げると、3月から5月にかけて全国の学校が休校した期間は、まさにこれまでの町や生徒との関係性、塾としてどのような教育の知見が溜まっているかが試されたと考えています。
2月末に安倍首相による休校措置の宣言を受けた時、「kii+」の中学3年の生徒は高校入試の約1週間前でした。そこから3年生に向けた受験対策のオンライン授業を開始し、春休みの期間で個別の学習サポートや社会課題に目を向ける探究授業、そして4月からは科目の集団授業を実施しました。
また、それらの知見を生かして中学校の先生方にオンライン授業の研修を実施したり、中学校Zoomを使用する際のサポートを行なったりと、関係性を強化する機会にもなったと考えています。

その後は実際に中学校で生徒総会をZoomで実施するなど、小さな変化がありました。自分たちの積み重ねをもとに先生方と協力関係を持つことができた1つの事例だと考えています。

【高橋】
「じゆうく。」ではこれまでの塾運営を改めて考えなければいけない課題も多く浮かび上がってきた印象があります。例えばオンライン授業を開始してから、学年ごとの生徒の参加率に非常に大きな差が生まれてしまいました。これまで関係性を築けていた生徒であれば、授業に参加してくれるのですが、新しく入った生徒の参加率が大きく低下するなどの問題がありました。
これは、そもそも塾としての学びの機能が十分に伝わりきっていないこと、それから友達やスタッフと会える場所としての機能のみで、学びの場として価値を提供しきれていなかったというこれまでの課題が明るみに出た事例だと考えています。

【前嶋】
「kii+」でも、オンライン環境がどこまで普及しているのかといった地域の様子が、オンライン授業の実施を通して見えてきました。そのため、オンラインとオフラインのハイブリットも非常に重要になると考えています。
また、これまで各家庭での生徒の様子を伺う機会は、三者面談の場であったり送迎時にお話させていただいたりすることが中心でした。そして今回、生徒が自宅からオンラインで授業を受けることで、生徒が家庭でどのように過ごしているのかであったり、保護者の方や兄弟とどんな会話をしているのかが見えました。それもオンライン授業を実施したことによる成果だと考えています。

【前嶋】
現在は両塾ともオフラインでの塾運営を中心にしています。3月から5月の間に起きた休校措置の中で感じた課題から、これからの塾運営で重要なことは何になると考えていますか?

【高橋】
これからの塾運営では、これまで以上にじゆうく。に通う意味であったり価値を生徒に届けることが大事になってくると考えています。コロナウイルスの第2波、第3波がこれ以降こないという保証はどこにもありません。その時に、オフラインでの授業やスタッフとの関わりの中で生徒が、価値やスタッフと一緒に学ぶことの意味を感じていないと、またオンライン中心の塾運営に戻った時に、生徒が家から授業を受けることやめてしまうかもしれません。
場所としての価値しか生徒が感じれていないからです。今後は常にオンライン中心の学びに移行することを考えながら、オフラインでの学びをデザインしていくことが、ウィズコロナ時代において重要な視点になってくると思います。また全ての塾としての機能をオフラインで実施するべきなのかを常に考えていくことも重要になってくると考えています。

【前嶋】
そうですね。コロナが去ればオフラインという認識は捨てるべきなのかもしれない。特に地方は交通手段や場所の制約などが都市と比べて非常に強いです。吉備中央町も例外ではなく、町の中に電車がないので、基本的に生徒の交通手段は保護者の方の送り迎えのみです。保護者の方は送り迎えなど時間をかけて生徒のみんなをkii+に通わせてくれています。保護者の方のご負担を考えた時にもオンラインで家から授業を受けられることは大きなメリットになるはずです。
例えば科目授業と探究授業はどちらも同じオフラインで行う必要はあるのか。受験が近づいてきた3年生の全員が必ず教室に集まって学ぶ必要はあるのかなど、オフラインとオンラインのそれぞれの良さを活かした教室運営を考える余地は本当にたくさんあります。それぞれの方法を丁寧に考える必要はありますが、オフラインとオンラインの2軸で行うことも視野に入れて考えることは大切な考え方になると思います。
そういった様々な面から考えて学びの形を提案することが、私たちのような公営塾が地方で活動をする価値なのかもしれないですね!学校や行政で活躍している方々とは少し違った視点から価値を届けることで、地方の学びをよりUpdateすることができるんじゃないでしょうか。

【高橋】
オフラインでの学びが深まり、塾にいるスタッフと一緒に学ぶことに価値がある。もしくは一緒に学ぶことが彼らにとって意味のある時間だと感じてもらうことで、オンライン・オフラインどちらの環境でも生徒のみんなに学びを届けることができるのではと考えています。これまで以上に1つ1つに意図を込めて学びを届けていくことが大事になりますね。

【前嶋】
本当にそうだと思います。教室として使わせていただいている公民館の装飾やものの配置まで意図を込めて集まって学んでいることの意義を伝え切る。そしてオンラインで学ぶ時も同じように家から学びを続けることの意味・価値を伝えていきましょう!
これからオンライン授業など地域を横断した取り組みもあると思います。その時はお互い協力してよりよい学びの環境を作っていきたいですね。これからもよろしくお願いします!

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