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多胡 友規 / 観光事業部長

観光事業 管掌
1994年生まれ。東京都豊島区出身。高校卒業後、国際基督教大学教養学部にて経営学を専攻。卒業後は、株式会社星野リゾート・マネジメントに入社し、「星のや軽井沢」でサービスチームスタッフとして現場運営を経験。2019年9月、FoundingBase入社。現在は大分県豊後高田市を中心とした観光事業のGeneralManagerとして活動中。


東京しか知らなかったぼくが、地方で働く理由

現在、ぼくは大分県豊後高田市の長崎鼻ビーチリゾートの運営をしており、主に観光の分野で地方創生に向き合っています。率直に言って、ぼくは地方とは無縁でした。ぼくは生まれも育ちも東京です。巣鴨や浅草といった下町で幼少期から学生時代を過ごしました。両親の実家も東京、千葉にありました。東京に好きな場所はあれど、愛郷心はありません。目まぐるしく変化していくのが東京の日常だからです。

そのため、地方創生は「地方出身者が故郷のためにやるもの」くらいのイメージで過ごしていました。そんな、東京しか知らない自分と地方がどのように繋がったのか、書いていきたいと思います。

自分の時間を充実させる人間になりたい

小学3年生から高校卒業まで、バスケットボール一筋でした。小・中・高のすべての年代でキャプテンを務め、バスケを通して多くのことを経験しました。特に中学・高校ではほとんど毎日が練習、休日も練習試合で文字通りバスケ漬けの日々を過ごしていました。

当時、ずっとバスケットしかやってこなかったせいか、束の間の休日の過ごし方が全く分かりませんでした。

「貴重な休みだからなにかしなきゃ」と焦って、逆に腰が重くなっていました。東京で遊ぶのには、当然ながらお金がかかります。長崎鼻ビーチリゾートに来てからも、「東京は遊ぶところがあっていいなぁ」と言われることも多いですが、東京の遊びは、つくられたコンテンツにお金を払って体験するものがほとんど。当時のお小遣いが3,000円のぼくにはなかなか手が出せません。

そんなわけで同じ漫画を何回も読み、ゲームを飽きるまでやる。そして、気づくと外が真っ暗で、「今日が終わってしまった」と虚しい気持ちになることもありました。大学進学を目の前にして、「バスケット以外でも自分の時間を充実させる人間になりたい」と、ずっと考えていました。

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高校卒業後は、「ユニークな人たち、文化と触れ合いたい」という理由で、国際基督教大学に入学しました。リベラルアーツ教育、国際的な風土を知って、中高一貫私立男子校でスポーツ漬けの学生だった視野の狭い自分とのGAPに惹かれたのです。

そして、サークル活動は学内でも最もユニークそうなところに身を置こうと考えて、お笑い研究会の門を叩きました。
日常からテレビの司会者みたいに面白い人。即興でパーティーゲームを作る人。お笑い・音楽・映画・演劇と気の向くままに表現する人。
そこは、コンテンツもお金も無いその場ですら、楽しい空間を変えられる人たちの集まりでした。ぼく自身も実際に舞台に立ち、ネタを披露する機会も持ちました。お笑いの動画を夢中で研究していたことを、今でも鮮明に覚えています。

楽しく充実した時間は、自分で、自分たちで創れるんだ。中高生時代に感じていた焦りは消え去り、毎日が刺激的で充実した時間でした。

サウナとの出会い

後に人生のテーマとなるサウナに出会ったのは大学2年生の冬でした。

タナカカツキさんの『サ道』というサウナ漫画を知り、サウナで”ととのう”という体験に興味を持ったのです。ととのう体験は想像以上でした。サウナと水風呂の温冷交代浴によって、身体が生まれて初めての反応を示したことに感動しました。

「自分の身体のことなのに、こんなにも知らないことがあったなんて、宇宙は広い!」
と、やたら大袈裟になるほどの衝撃がそこにありました(笑)

その後は、アルバイト代を全て注ぎ込むくらい、どっぷりとサウナにハマっていきました。いかなるコンディションでもサウナなら充実した時間を過ごせるので、余暇の過ごし方が分からなかった自分にとっては、理想の体験だったのです。

「サウナさえあれば自分は楽しくやっていける。理想のサウナを作りたい」と、本気で考えるようになりました。

星野リゾートへの入社

就職活動の軸もサウナでした。色んな人に驚かれましたが(笑)
いくつか内定もいただいた中で、ぼくは温泉旅館の運営をしている星野リゾート・マネジメントへの入社を決意します。

新入社員研修の時に、星野代表への質問できるという貴重な機会がありました。今後の事業方針、地方創生や観光業の未来についての質問が飛び交う中、ぼくも手を挙げて質問する機会をいただきました。

「サウナについての展望があれば聞かせてください。ホテルのサウナ体験を磨き上げて、もっと日本にサウナを広めたいんです!」
と発言すると、
「好きな水風呂の温度はありますか?」
とすかさず聞いてくださいました。

「13℃が理想とされてるけど15℃くらいの、ぬるめが好きです」
「結局サウナは水質が重要だと思います」
などと、会場を置いてけぼりにして星野代表とサウナ談義を繰り広げたのは、今でも良い思い出です。そこから"サウナの多胡さん"として、社内で知ってもらえるようになりました(笑)

「お客様のために」を考え続けた旅館運営の現場

入社後、ぼくは「星のや軽井沢」という日本旅館に配属されました。

この時から、僕にとって初めてとなる地方への移住体験の始まりです。
ただ、星のや軽井沢では、地方との関わりというよりは、とにかく現場で来館いただくお客さまと接する毎日でした。

正直、1年目は苦労の連続でした。

星野リゾートの育成方針の原則は、マルチタスク人材の育成です。朝食、チェックイン、フロント、電話対応、夕食、チェックアウト、客室清掃。宿泊に関する業務は、一通り全て習得することが求められます。

ぼくは何の業務をやっても不器用で、失敗ばかりでした。同期の中でも、誰よりも失敗した自信はあります。ただ、不器用ながらも失敗を失敗で終わらせず、1つ1つに対策を講じて着実に身につけていきました。

失敗し続けた経験が財産になり、2~3年目には現場運営の仕組みそのものに変革を起こすことができるようになってきました。どんな不器用な人でも、期待値以上の安定したアウトプットが出せる仕組みを作っていくことが、当時のぼくのやりがいでした。

特に、高級旅館で接客応対サービスの本質について掘り下げられたことは、非常に学びのある時間でした。
接客というと、即効性のある小技が山ほどあります。しかし、突き詰めていくと”名人の領域”が存在するのです。それを言語化して、再現可能なスキルとして落とし込む仕事は面白くて仕方がなかったです。

星野リゾートで働く中で、「相手の時間を充実させる体験の提供」がサービスの本質であると実感するようになりました。

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やっぱり、サウナがしたいです。

FoundingBaseとの出会いは偶然でした。

日々の現場業務にやりがいを感じていた一方で、自分の軸であったサウナと向き合う時間が減っていきました。このままでは、「理想のサウナ体験を創る」という夢が口だけで終わってしまう。そんな焦りもあって、とにかく行動しようとサウナのブログを書き始めました。1ヶ月間、毎日いろんな切り口でサウナを言語化してみたのです。

すると、大学時代に繋がりのあったFoundingBase池田(当時の人事担当。現在は新潟県三条市にて活動中)が、そのブログを見て声をかけてくれました。

「大分県にある長崎鼻ビーチリゾートでサウナサービスを導入予定だから、話を聞かせて!」

すぐに現地で活動する夏川戸(Community Manager)と3人でお話をすることになりました。

「ぜひ現地にも遊びに来てください。せっかくなんで、湯らっくすにも一緒に行きましょう!」

と言っていただき、熊本にあるサウナの聖地”湯らっくす”に行きたかったぼくは、2か月後に旅行することをその場で決めていました。当時の動機は、長崎鼻ビーチリゾートよりも完全に湯らっくすでしたね(笑)

未来にワクワクし、未来を創る人たち

2019年1月、3泊4日の滞在期間中に大分県豊後高田市を案内してもらいました。それはガイドブックの有名観光地を見る旅ではなく、FoundingBaseメンバーたちの地域との関わり方に触れる旅でした。

楽しみにしていた湯らっくすにも一緒に行き、そのときのサウナでの会話が一番印象に残っています。

「地方って遊ぶところも多くないし、退屈にならないですか?」

「地方には、まだまだたくさんの余白がある。遊びや魅力を創る側になればなるほど、結果的に自分たちが一番面白いし、楽しめるよ。」

ぼくは、その返事に衝撃を受けました。

星野リゾートで働く中で、”お客さまのために”という想いは誰よりも強くもっていたつもりです。一方で、いつしか”自分”という主語が抜けていたように思います。

「お客さまの時間を充実させる体験を、自分で、自分たちで創っていく」という働き方。

それを体現していたのが、豊後高田で働くメンバーでした。
この旅をきっかけとして、ぼくは将来のことについて考え始めました。

・創りたい未来について思考し、実現に向けて本気で取組む仲間と働きたい
・自分が創る側となって楽しみたい
・結果を出して、お客さまや関係者の方々に喜んでもらいたい
・口だけではなく、サウナ体験を作りたい

このような想いを胸に、ぼくはFoundingBaseに入社することに決めました。

プレイヤーとして掲げていた目標

ぼくが入社してからマネージャーになるまで目標が2つありました。

1つめは、長崎鼻ビーチリゾートの運営を通して、地方に眠っている土地の利活用が実現可能であることを証明すること。

僕たちが今、長崎鼻ビーチリゾートで目指しているのは「あなたにとっての、3つ星リゾート」です。まだまだ僕たちの体力では、数億・数十億と投資をして豪華な施設をたてる力はありません。

その地ならではの魅力を活かした、感動体験の提供。また帰ってきたい、と思ってもらえるような接客サービス。

星野リゾートで学んだサービスの仕組み化よって体験価値を向上させ、持続可能な収益事業にします。そのためには、自分自信が長崎鼻を遊び尽くすこと。休憩の合間に釣りをしたり、釣った魚をBBQで天ぷらにしてみたり、遊び心をもってサービス開発に取り組んでいます。

2つめは、裸のコミュニケーションが生まれる場所としてサウナを作ることです。

これは人生のテーマでもありますが、フィンランド旅行でサウナが老若男女にオープンなコミュニケーションの場になっていたのを体感し、日本においても実現したいと考えています。余暇の過ごし方として、自分の時間を充実させるようなサウナの場を提供していきます。

長崎鼻ビーチリゾートでもトレーラーサウナの導入が決まり、自分の目標の一つであったサウナの場の提供が実現できました。

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どんな土地でも、その地ならではの面白さを発見し、誰よりも自分が楽しむ。それが結果としていろんなサービスや事業につながり、地域に関わる方々を楽しませる。

自分が観光領域で取り組む「自由」のUpdateとは、その場所なりの楽しみ方の発見でした。

今後の展望

現在は、観光事業部のGMとして、主にはアウトドアの宿泊施設がメインですが、地域の遊休地を活用した魅力的なコンテンツづくりを行っています。これまで1プレイヤーとしてコンテンツづくりと運営に携わっていましたが、事業計画を創りメンバーをマネジメントしながら組織として計画を実際に形にしていっています。事業を推進していく上での課題は、自治体と協働して事業を推進する中で、ハードだけではなく、ソフトサービスも充実させて顧客への提供価値をする必要がある点です。
FoundingBaseとしては人口が減少傾向にあり財政的にも余裕がなく、条件が不利であったりという課題を抱えた自治体とまちづくり会社として関わっています。観光拠点を創出するためのハード投資が限られる中でも、「あなたにとっての3つ星体験」というコンセプトを掲げて、お客様にまた帰ってきたいと思っていただけるような場所を目指して活動してきました。たとえば、「あなたにとって」の価値提供ができるようにお客様とお話したことや購買履歴などを蓄積して、個別に応じた接客スタイルを確立しました。さらに、帰ってきていただくために顧客データベースを構築して「あなたにとって」の魅力づくりと情報発信につなげていきました。実績として弊社が運営する長崎鼻ビーチリゾートはリピート率25%となり売上を大きく伸ばし、事業コストや人件費はもちろんのこと、行政支出となっていた維持管理コストも含めて事業収益から賄うことができる自主独立採算の体制を構築することができました。


GMとして見える会社全体の雰囲気、今後の事業の展望会社全体の雰囲気としては、MISSION”「自由」をUpdateする”に共感して集まった仲間たちだからこそ、組織としても「挑戦」や「成長」といった未来に繋げていくエネルギーがあるのが特徴です。観光事業部では、これまで1施設でしたが、2023年度には新たに3施設の新規開業をしており、これもまた事業の横展開と地域に応じたローカライズという会社としてのチャレンジをしています。
今後は、「あなたにとっての3つ星体験」という顧客にとっての経験価値をさらに追求して、FoundingBaseとして独自の価値となるまで磨き上げることに挑戦していきます。


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