日本一の公教育を目指すまち。「あびら教育フォーラム2024」が開催されました!@北海道安平町
日本一の公教育を目指し、官民協働で教育×まちづくりを進めている北海道安平町にて、昨年に続き2回目となる『あびら教育フォーラム』を開催しました。2日間合わせて約300名の方々にご参加いただいた本イベントのレポートをぜひご覧ください。
◆まちが学校・学校がまち
2023年に実施した1回目は、開校直後の義務教育学校『早来学園』のハードとソフトがどのように作られてきたのか、どんな想いが込められているのか、に焦点を当てたプログラム構成でした。参加された方の反応から、1回目の実施としては良いものが作れたと感じる一方で、「フォーラムの場に町民の姿があまりない」ことに課題感を抱えていました。
今年度はどんなUpdateをしようか。そんな議論の中から生まれた今年度のテーマは、「まちが学校・学校がまち〜日本一の公教育を目指す安平町を徹底解剖〜」。安平町の公教育環境を彩る様々な方々の姿が見える、そして公教育とまちづくりは密接に連関し合っていることを参加者に感じてもらえる。そんなフォーラムにしたいという想いから、今回の企画が始まりました。
ここからはタイムラインに準じて当日のプログラムをご紹介していきます。
2本のゲストトーク〜「やってみたい」の重要性〜
初日の午前中は、2名のゲストによる講演から始まりました。
まずは、文部科学省の岩岡 寛人さんによる講演「子どもも教職員もワクワクする学校づくりに向けて」。予測困難かつテクノロジーの進歩が著しい現代において、人間に求められるのは、「やってみたい=ワクワクする」という気持ちを持つこと、そしてそれを様々な人(やテクノロジー)との協働によって叶えていくこと。ワクワクとドキドキは紙一重。一歩踏み出すのは不安だけど、自分だけで解決しようとせず、適切に周りの力を使おう。思い切って手放そう。新しい学習指導要領づくりに携わる岩岡さんの力強いメッセージが込められたご講演でした。
次に話してくださったのは、一般社団法人日本プレイワーク協会の天野 秀昭さん。安平町も大切にする「遊育」という言葉の生みの親です。
教育は「教え、育"てる"」だけど、遊育は「遊び、育"つ"」。似た言葉に聞こえるかもしれないが、主語が180度違う。小さい頃からの遊び(=「やってみたい」の具現化)の連続により、徐々に自分の世界が形成されていく。そういった営みを経ないで育つと、「やりたいことは特にないです」と世の中に対して無気力な人たちで溢れてしまう。「遊び」こそ、大事にするべき価値観なのではないか。「教育」に対する捉え方が変わるきっかけを具体事例とともに届けてくれました。
問題提起の角度や具体の内容が異なるお二人のご講演でしたが、共通していたのは、「やってみたい」の重要性。安平町の公教育環境で大切にしている価値観とも一致していて、フォーラムの内容に厚みを持たせてくれました。
まち全体が遊び・学び・挑戦のフィールド。〜子どもも大人も生産者で溢れるまちの博覧会〜
「安平町の公教育環境を彩る様々な方々の姿が見える」。これを実現するために、町民や安平町に関わる方々によるブース発表の場を設けました。子どもも大人も入り混じって、自分の「やってみたい」から始まっている活動やプロジェクトについて発表。参加者の方々も、思い思いに興味のあるブースに行って対話を重ねる時間となりました。挑戦の連鎖が生まれている安平町らしい素敵な空間でした。
その裏では、全国から注目を浴びる『はやきた子ども園』や『早来学園』の視察ツアーも開催。様々な「やってみたい」を叶えられそうな環境に驚かれた方も多かったのではないかと思います。
参加者のランチは、地域おこし協力隊が営んでいるキッチンカーに提供していただきました。彼らもまた、普段から安平町の公教育に関わり、子どもたちのプロジェクトのサポートをしてくれています。
首長座談会〜令和時代の特長あるまちづくりを語る〜
1日目最後のコンテンツは、首長座談会。北海道安平町の及川町長、美唄市桜井市長、美幌町平野町長、えりも町大西町長が登壇し、北海道内4つの自治体の首長による座談会となりました。目的は、「自治体トップの話し合いを通じて、各自治体のまちづくりの方向性や考え方、またその努力と苦悩に触れること」でした。
まず各まちの紹介プレゼンを行い、その後で全体でディスカッションを進めました。「人口減少」という共通の課題があり、それによる担い手の減少を危惧する考えも共通していたため、自然と広域連携の話へと展開しました。専門性を持った人材や各自治体のナレッジをシェアするなど、連携による課題解決の体制づくりを進めたいという共通認識が作られました。
ただし、連携といっても各まちによって風土や歴史、まちの強みが異なるため、他自治体の事例をそのまま持ち込むだけでは不十分。「まちを盛り上げるのは、結局熱量だ」という意見も上がり、「本当にまちの未来を考え、今の課題に対して熱量を持ってチャレンジすることこそ、未来が見えない令和時代のまちづくりに必要ではないか」という指摘が印象的でした。
私たちには何ができるか?アウトプットの場〜キャンプ場で懇親会〜
なんとか天候に恵まれ、今年度も『安平町ときわキャンプ場』にて、大懇親会を開催することができました。フォーラムで得られた気づきや学びがたくさんアウトプットされる場。「安平町での事例を踏まえて、自身のフィールドでは何ができるか、どんなことから始められそうか。を考えるきっかけになったら...」と願っていた主催者からすると、非常に嬉しい時間でした。地域おこし協力隊の坪松さんによるクラフトビール、レストランしばらくさんのオードブルや、道の駅あびらD51ステーションの特産品で参加者をもてなしました。いつもありがとうございます!
安平町公開討論会〜「日本一の公教育を目指すまち」の課題と挑戦〜
2日目のメインプログラムは「安平町公開討論会」。この企画は「まちづくりの議論の過程を見せること」を目的として行いました。安平町は教育まちづくりを進める中で一定の成果が出ていますが、同時に多くの課題も抱えています。公開討論会を通じて安平町の現状認識を深め、今後の発展をより加速させることを目指しました。
討論会は、「今の安平町の課題は何か?」という共通質問に対して、それぞれの回答を踏まえつつ議論を深めていく形式で進めました。観光協会事務局の木村さんやまちづくり委員会の佐藤さんからは等身大の意見が寄せられ、及川町長や井内教育長も問題意識を提示しました。特に安平町は「日本一の公教育を目指すまち」として掲げるものの、実際には内部に多くの課題が残っているという指摘がありました。教育のポジティブな面に注目されがちですが、ネガティブな部分も存在していることを包み隠さず議論する場となりました。一方で、「安平の魅力は、前向きに動き続けようとする」という意見もあり、課題があってもそれを解決するために行動する姿勢が安平町らしさだという声もありました。
安平町の挑戦はまだ始まったばかり。早来学園などの新しい施設がまちづくりの進捗を示していますが、その真価はこれから。FoundingBaseとしても今回の意見にしっかりと向き合い、来年度に向けた改善を行なっていきたいと思います。
あびら教育100人会議〜あびらのみらいを考えるワークショップ〜
2日間の締めのプログラムとして実施されたのは、安平町教育委員会による『あびら教育100人会議』。5年に1回改訂する町の生涯学習計画を作成するにあたって、広く声を集めようという趣旨で開催された企画です。フォーラム参加者はもちろんのこと、町内の子どもたちやシニア世代の方々も一堂に会し、「日本一とはどんな状態?」「”教育”に変わる新しい言葉は?」「自分なら何をやってみたい?」などのテーマで活発な対話が行われました。予め準備していたファシリテーターの役割が要らないくらい積極的に意見が交わされる場となり、「まちへの興味関心は、ジブンゴトから広がる」が体現されていました。
結びに〜日本一を決めるのは“誰か”じゃない〜
フォーラムの中で、安平町の井内教育長がおっしゃっていた言葉が記憶に残っています。「日本一を決めるのは”誰か”じゃない。統一の基準でもない。安平町に暮らす一人ひとりが、“このまちで良かった”と誇りを持って言えるかどうかが大事。」
「まちの人との共創」を大事にしている我々FoundingBaseとしても、誰かが強烈に引っ張り続けるまちづくりではなく、町民それぞれが「やってみたい」を叶えたり、それをサポートしたりしながら、それぞれなりの役割を全うし、貢献実感を持てるようなまちづくりが素敵だと捉えています。今回のフォーラムを機に我々自身も「より良いまちづくりとは何か」「より良い安平町とはどんな状態か」を思考し、より一層、安平町との協働を進めて参ります。
本フォーラム開催にあたってご協力いただいた皆さま、ご多忙の中でご講演・ブース出展いただいた皆さま、そしてご参加いただいた皆さまにこの場を借りて感謝を申し上げます。誠にありがとうございました。
あびら教育フォーラムは来年度も開催予定です。さらにUpdateされますので、ぜひ楽しみにお待ちください!
※NHKさんにもご取材いただきました。