2022年度上期『Best Project賞』 受賞インタビュー(東洋町 海の駅チーム)
FoundingBaseでは半期に一度、全社メンバーが一同に集う合宿を開催しています。
2022年度上半期合宿が先日行われ、「自由」のUpdateにつながるProjectを推進した個人/チームに贈られる賞として、Best Project 賞の授賞式を行いました。
2022年度上半期の Best Project 賞を獲得したのは「東洋町 海の駅チーム」。
昨年の12月から始まったこの取り組みは、高知県の東洋町にある「海の駅」の経営改善を目的とした事業です。「海の駅」は地域の直売所として存在しており、地域の皆様の生活を支え、生産者の皆さんにとって重要な経済拠点。
FoundingBase 海の駅チームは、運営初年度ながら上期売上目標を5ヶ月連続達成。また、売上という結果だけでなく、共に戦い高め合えるチームづくりを実現するプロセスが非常に素晴らしかった、という点で評価をされました。
今回は、Best Project 賞を受賞した、東洋町 海の駅チームの池田さんと宮島さんに、海の駅のこれまでとこれからに迫るインタビューを行いました!
■ 東洋町 海の駅について
■ 東洋町 海の駅 チームメンバー
■ インタビュワー
「スタッフ全員で取り組んだ海の駅の変化」
【坂和】
Best Project 賞の受賞おめでとうございます!全社メンバー納得の受賞だったかと思います。
あらためて受賞された感想を聞かせてください。
【池田】
ありがとうございます。FoundingBaseの東洋町チームとしては、宮島くんと私の2人なんですが、海の駅は他にも地域のスタッフが14名います。そうした海の駅のスタッフの方を含めたみんなが、私はチームだと思っています。だから、今回のBest Project 賞も、海の駅チームみんなで受賞できたと思っています。
【宮島】
自分はまだ入って3ヶ月ですが、海の駅が変わってきたのを一番間近で見させてもらっています。FoundingBaseとしても海の駅や東洋町での取り組みは初めての挑戦なので、このような賞をもらえて嬉しいです。スタッフの方にも受賞したことを報告しましたが、組織全体で1チームしかもらえないんだ、ということを伝えたらとても喜んでもらえました。
【坂和】
今、池田さんがお話されていた“スタッフ全員がチーム”という言葉が非常に大切だと思っていて、今回の受賞にあたって最も評価されたのが、FoundingBaseとして掲げている「協働し、共創する」というVALUEをまさに体現している取り組みであるということでしたね。
もちろん、数字的な変化を出すことは大切ですが、海の駅では、スタッフの方も含めて全員がコトを前に進めるためにチャレンジしている、ということがFoundingBase社内はもちろん、東洋町役場からも素晴らしい変化だと言われています。
もともとそういったスタッフさんばかりではなかったということですが、池田さんが入られて以降、対話を通じてスタッフさんと向き合い続けたからこその変化が今 生まれていますよね。
立ち上げから1年弱という短い期間で、とても大変だったかと思うんですが、そこまでやりきれたポイントってなんだと思いますか。
【池田】
「協働・共創」は私もとても重要だと思っています。
たとえ、私と宮島くんががんばっても、たった2人しかまちを変える力がないと思うんです。だけど、海の駅スタッフ全員で取り組めば16人になる。8倍のスピードでまちが変わっていくと思うんですよね。なので、はじめから自分だけができるようになるだけだと意味がないって思っていました。
私が着任したばかりの頃は「何しにきたん」「なにしたいん」というのをめっちゃ聞かれたんですね。でも私は一貫して「自分達がどうしたいかではなく、みなさんはどうしたいんですか」って聞いてたんです。
おそらく、それは町の方が聞きたかった答えではなかったんですが、突然他所から現れた人間が「私はまちをこうしたいんです」といったところで、まちが本当によくなるのかなって思ってたんですよ。だから「あなたたちはどうなりたいんですか」というのを常に問い続けていました。
事実、私が入った当初はスタッフさんのモチベーションもけっして高いとは言えませんでした。
みんな決められたマニュアルに沿って仕事をしていて、まったく仕事を愉しめていなかったんですよね。だから、最初のスタッフさんとの面談では「みなさんがどうなりたいか」「海の駅はこのままでいいのか」というのをとにかく聞き続けました。端的に「この仕事に誇りを持てていますか」という話を聞きたかったんです。
そうしたら、スタッフさんから「友人や家族、こどもたちに自信を持って、ここで働いていると言えない」という話が出てきたんですよね。だから「まずそこから変えましょうよ、自分が自信を持って働ける場所にしましょうよ」ということを、少しずつ話していきました。
「自慢の職場」にどうやったらなれるのか。
スタッフのみなさんに聞いていったら、まず出てきたのは地域の魚。自慢の魚を出したい、という話が出てきました。「だったらそれをやりましょうよ」ということで、一つずつ取り組んでいったら、みんなのモチベーションも徐々に上がっていき、今ではチームみんなで頑張る、という雰囲気が生まれたと思っています。
「スタッフの声から生まれた看板メニュー」
【坂和】
なるほど、地域の人がもともと知っている地域のいいところや、自慢できるところをもっと現場に活かしていって、自分達が誇れる職場にしましょうよ、ということをコツコツと積み重ねてきたんですね。ちなみに、実際にどのようにしてスタッフの方から出てきた話を進めていったんですか。
【池田】
出てきた意見や課題に対して、どうやったらできるようになるか、実現するにあたって困っていることや課題を細かく聞いていって、一つ一つ解決していく。というのを繰り返しました。小さな話ですが、備品がなければ買いましょう、とか、地域のお魚を出したいけどお魚をロスするのが怖い、扱ったことがない、ということであれば、まずは少量から始めていきましょう、とか。
今では看板商品になっている刺身定食も最初は5食からはじめました。やってみると評判もよく、そういった声もあって、少しずつみんなが楽しみ始めてくれて、今では多い時に50食も出るほどの人気メニューとなっています。
【坂和】
それはすごいですね。
ちなみに、今ではスタッフの方がマグロを一本捌くそうですね。
【池田】
そうですね。もともとはまぐろを安定的に仕入れようにも、一本買いをしないと、市場で相手にされないという理由からでした。今までは地域に地元のまぐろが安定的に流通することなく、都市部に流れてしまうことも多くありました。
最初は10キロ程度の小さなものから仕入れ捌くことをはじめたんですが、意外にできてしまったんですよね。だから、私は無邪気に、ちょっとずつ買い付けるマグロのサイズを大きくしていきながら「買っちゃいました!」という感じで持ち込むんです。そうすると、みんな「池田さん〜困るわ〜」と言いながらも前向きに挑戦してくれました。
【坂和】
海の駅開業以来、初めて地産食材の使用率が町外産の食材使用率を上回ったと聞きましたが、地元の食材だけでそこまで魅力的なメニューが作れるというのはとても恵まれた豊かな環境ですよね。
【池田】
本当にそうですね。FoundingBaseの拠点の中でもとても恵まれている環境だなと思います。
海水浴場もあって、サーフィンも盛んなので観光客もくる。それに加えて美味しい魚も取れる地域って他にないと思うんですよね。
だからこそ、事業で成果を上げやすい環境だなと思っているし、今回の結果は東洋町としては当たり前に出せる成果だと思って、それ以上に圧倒的なアウトプットを出さないといけないと感じています。
「熱い思いを持ったまちの人と協働する」
【坂和】
お話を聞いていると、仕事をとても愉しんでいるのが伝わってきます。
一方でこれまでのやり方を変えて、地域の方に任せていくスタイルに不安はありませんでしたか?
【池田】
そもそも、地域スタッフの方々が、「このままではだめだよね」というのを思ってたので、そこをうまく汲み取りながら、コトを進めることができたと思います。
着任する前にもともと聞いていたスタッフの方々の印象と、私が実際に現場に入って感じたものが違ったんですよね。
スタッフのモチベーションが低いのではなく、逆にとても高いからこそ、主体性を発揮できずにやらされていることに対して、不満を持っていたんですね。なので、そこを一つ一つ解きほぐしていったら、いいんじゃないかと思ったんです。実際、スタッフからはこれまでうまくコミュニケーションを取れなかったから反抗的な態度をとっていた、ということを言われたんです。だから、逆に池田さんは困っていることや意見を聞いてくれるから、ありがたいという話もされました。
誰しもがスタッフとはうまくいかないんじゃないかと不安を持っていた中、まさか魚をスタッフ自ら捌くまで変化するなんて思ってもいなかったようです。それまでずっと、食材はほとんど既製品を使っていたんですね。魚ですら冷凍の魚を町外の業者から購入して使ってたんです。
【宮島】
ぼくは変わった後からしか知らないんですが、スタッフさんのレベルがとても高いなと思います。一緒にやってて、すごいなと思うことがたくさんあって、自分が取り組んでいるBBQ事業のお肉の下処理など、ほんとに多くのことを助けてもらっています。なにより、ぼくの事業のことも含めて、何事にも興味関心を持って一緒に取り組んでくださるので、ぼくも一緒に頑張ろうという気持ちが湧きます。
【池田】
東洋町に訪れるFoundingBaseスタッフのみんなは、行政や海の駅スタッフの方とわれわれの距離感が近いと言ってくれますね。役場の方も困ったらなんでも言ってね、という言葉をしばしばかけてもらいますし、まちの人たちが一緒になって、まちのために頑張ろうという気持ちを持っているのは私も嬉しいです。そしてなにより、一緒になって働いているまちのプレイヤーが若いです。とにかく元気だし、熱い人が多いんです。
なんでそこまでできるんですか、という質問をすると、「このままだとこの町がなくなってしまうかもしれない」というのを本気で言っている。本当に、危機感を感じているから、みんな本気でやっているんだなと思います。
「これからの東洋町とFoundingBaseについて」
【坂和】
東洋町にとって海の駅の取り組みが非常に価値のあるものだということが、インタビューを通じて、あらためて理解できました。また、東洋町の可能性についても感じることができたお話でした。ありがとうございます。最後に、今後の海の駅、また東洋町におけるまちづくりの展望を教えてください。
【池田】
海の駅はまちの経済の中心なので、より多くの人に訪れてもらい、満足して帰っていただく状態を目指しています。そのためには、ここにしかないものを提供しつづける必要があると思っています。
レストラン事業に取り組んだのは、海の駅内部で完結することである、といった取り掛かりやすさがあったからですが、これからは直売所の魅力化にもチャレンジしたいと考えています。そのためには、出品している生産者の方とのコミュニケーションが大切になってくると感じています。
また、東洋町全体で見た時に、今は海の駅という一次産業領域を中心に取り組んでいますが、これからは観光領域とリンクさせて、ここでしか食べられないものを滞在価値として提供していく事業を展開していきたいと思っています。一次産業、観光のどちらも合わせて捉えることで、FoundingBaseが思い描く、「知らない町から気になる町へ」そして「関わりたい町へ」と繋がっていくのではないかと思っています。そしてこれは、当初から期待されていた海の駅の経営改善にとっても重要なポイントだと思っています。やはり、手数料率の決まっている直売所だけでは、収益を上げ続けるのには限界がある。地域の余白を活かしたBBQやグランピング事業などにチャレンジして、収益構造の改革を実現していきたいです。
【坂和】
一次産業と観光を掛け算して新たな町の魅力をつくっていく。まさに「コトを創り、コトを進める」ですね。
【宮島】
とはいえ、新しくチャレンジしているBBQ事業は正直まだまだこれからです。東洋町に人は来ているし、海の駅に活気はあるけれど、BBQ事業の認知度はまだまだ低い。だからこそ、BBQや事業単独で勝負するのではなく、海の駅と連携させて、ここにしかないコンテンツを売り出していくことで、事業価値を高める施策を展開していきたいです。
【坂和】
まだまだ挑戦ですね。
今後の東洋町の展開がますます気になります。引き続き、がんばってください!今日は、ありがとうございました。
インタビュー中、東洋町の暮らしについて聞くと、毎日海を見て帰れるこの環境がとっても好きだと宮島さんは話していました。海の駅の事業も魅力的ですが、そんな取り組みを行っている東洋町のまちにも一層興味が湧きました。