リニア中央新幹線の長野県駅予定地に隣接し、三遠南信自動車道の整備も進むなど、広域アクセスの変化を見据えるなかで、佐藤村長が掲げるスローガンは「小さな村だからこその豊かな暮らし」。
合併せず150年以上の歴史を持つ人口約5,800人の村、長野県喬木村。
規模の小ささを“弱み”ではなく“強み”として捉え、持続可能なまちをつくる―。地方創生の文脈で語られがちな人口拡大や人口誘致とは一線を画す、この構想はどのように生まれたのか。
佐藤村長に、これまでの歩み、いまの構想、そしてまちづくりを共に進めるパートナーへの期待を伺いました。
村への想いから、村議、そして村長へ
-佐藤村長は、村長就任以前は村議会議員を2期務められていました。議員になったきっかけを教えてください。
佐藤村長:Uターンで喬木村に戻ってきて、「やっぱりこの村が好きだ」という気持ちがずっとありました。
村議会議員になるまでは、同年代のグループでボランティアや祭りの出店など、一住民として地域を盛り上げる活動をしたり、商工会の役員やPTA会長、消防団の団長を務めてきました。
これまでの取り組みをみていた仲間の後押しもあって、「村のためにできることがある」と思い、手を挙げたのがきっかけです。
-首長を志すようになったのも、議員という地域活動の影響が大きかったのでしょうか。
佐藤村長: そうですね。議員として、住民の皆さんの困りごとや要望をお聞きして、それを村に提案していく橋渡し役として奮闘してきました。とはいえ、そのすべてを叶えられるわけではないという葛藤もありました。
住民の思いをより村政に反映させていくには、村長という立場だからできることもあるんじゃないか。そう考えるようになりました。
「小さな村だからこその豊かな暮らし」―佐藤村長が描く豊かさのかたち
-就任時に掲げたスローガン「小さな村だからこその豊かな暮らし」が印象に残っています。改めて、スローガンに込めた想いを教えてください。
佐藤村長:人口減少のなかで、どう持続可能な村づくりをしていくかを考えた時に、住民一人一人の声を政策にして届ける政治をしたいと思いました。
まちの規模が小さいからこそ、住民の声が届きやすく、政策も行き渡りやすい。
住民一人一人にスポットを当てられるという意味では、小ささというのはこの村の魅力であり強みであると思っています。
-佐藤村長の考える「豊かさ」とはどのようなものでしょうか。
佐藤村長:豊かさは数字や形だけではなくて、「なんかいいな」と感じてもらえる雰囲気も大事だと思っています。そういう空気感は、住民同士のつながりから生まれるものだと考えています。
人口減少という課題はあるけれども、減っていくからどうしようではなくて、小さいからこそ住民一人一人と向き合えるし、結束もしやすい。
小さくても可能性に溢れた場所として、独自の魅力を発信していけるんじゃないかと思っています。
ブランド「感動よ、つなげ。」が描く、喬木村のこれから

-2026年3月、村の公式ブランド「感動よ、つなげ。」を公開しました。
ブランドを軸に喬木村独自の魅力を発信していくこの取り組みは、シティプロモーションの柱と位置付けられています。
このブランドづくりには、高校生から40代までの幅広い世代の村民が参画しています。多世代でブランドをつくる動きについて、改めてどう感じていらっしゃいますか。
佐藤村長:大賛成です。ただ、若い世代にはもっと表に出てきてほしいという思いもあります。
今回、新たに中高生が14人も集まってくれたことは心強いですが、まだまだ一部でしかありません。中高生の活動を見て20代から40代の若い世代が入ってきてくれると思いますし、そうなると、また違うアイデアやエネルギーも出てくると考えています。若い世代が中心となって、横だけではなく縦の繋がりを強くしてくれると期待しています。
-佐藤村長ご自身も、住民との関わりを広げる取り組みを構想されていたとか。
佐藤村長:村長就任当初、「村長100人会議」みたいな場を立ち上げる構想もあったのですが、皆さんがここまでやってくれているんだったらお任せしようと決めました。
100人は難しいかもしれませんが、人数が集まると、また違うエネルギーが生まれるはずです。良い方に転ぶか悪い方に転ぶかは分からないですが、変化が起きること自体良いことだと捉えているので、これからの活動に期待しています。
PERCHを起点に、村全体に広がる動きへ
-住民や外部人材、事業者が交わり、ブランドを実装していく共創拠点として、2026年3月にはCo-creation space PERCH(以下、PERCH)もオープンしました。PERCHにはどのような期待をお持ちですか。
佐藤村長:PERCHについては前任から引き継いだものですが、議員の時からこういう話はしていたので、できたことは本当に大きいなと思っています。ただ、作ることが目的ではないので、ここでどんなイノベーションが起きていくか、期待しています。
-PERCHを起点に、今後どのような展開を構想されていますか。
佐藤村長:PERCHはあくまで1つ目の「点」で、これからいくつか同じような「点」を作っていきたいと考えています。点が繋がって線になり、最終的には村全体の動きとして広がっていく。そういうイメージを持っています。
次の点としては、上平(うえだいら)地区周辺で、観光誘致を動かしていきたいと考えています。
-上平地区の構想は、まさにこれからですね。共創・協働するパートナーにはどのようなことを期待されますか。
佐藤村長:単なるグランピング場のような外向けの観光施設では、地域とのつながりが薄く持続的な事業にはなりません。地域と連携できる、地域を巻き込める施設になってこそ、次の点として機能していくと考えています。
そういった意味でも、まずはPERCHを地域の共創拠点として軌道に乗せることが何より大事だと考えています。
子どもたちにこそ届けたい「豊かな暮らし」ーICT教育の次にある、自然体験
-シティプロモーションの観点で、移住者に向けた発信も重要になります。特に、移住においては、教育環境の魅力も大きな決め手になります。
喬木村は「GIGAスクール構想」に先駆けてタブレット端末を導入するなど早くからICT教育の先進事例として注目されていました。
教育の観点で、どんな魅力づくりや発信をしていきたいですか。
佐藤村長:これまで喬木村は、先駆けてICT教育に取り組んできました。今後は、先進的なICT教育を受けつつ、自然体験や農業体験ができる環境を魅力として打ち出したいと考えています。
昨今、安全面への配慮から子どもたちが川などで遊ぶ機会が減っていますが、子どもの頃の自然体験は感性を伸ばし、危険を察知する力などあらゆる能力の育成に繋がっていくと考えています。先進のICT教育に加えて、安全な環境を整えて、農業体験などここでしかできない学びの機会を提供する。そのプラスアルファの部分が、これからの喬木村の魅力になると考えています。
これからの4年と、その先の喬木村
-2026年1月に首長に就任されて、ご自身に変化はありましたか。
佐藤村長:これまでは「自分がやらなければ」という思いが強かったのですが、喬木村へのみなさんの想いを聞く中で、周りの力を最大限に活かし、多少の冒険は首長として判断していこうと考えるようになりました。
-今後、注力していきたい政策や課題について教えてください。
佐藤村長:公約として18の項目を掲げていて、そのなかには医療機関の誘致や道路の整備なども含まれます。
小さくても住民が安心して住める村でなければいけないので、必要な機能や基盤を整備していきたい。そういう部分が「選ばれる村」には必要だと考えています。
-最後に、佐藤村長が描く、5年後、10年後の村の姿をお聞かせください。
佐藤村長:最終形というものはまだ自分のなかでは見えていないし、作るべきでもないかなと思っています。
リニアが開通するかにかかわらず、今の状況でも喬木村の魅力を出していけるような村にしていきたいと思っています。
※この記事は2026年07月時点の情報です。
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