京都府の北部に位置し、日本三景の一つ「天橋立」を有する京都府宮津市。美しい海と豊かな自然、歴史的な街並みに恵まれた城下町です。人口は約15,000人と、多くの地方自治体と同様に高齢化と若年層の転出による人口減少が課題となっています。
2018年に就任した城﨑雅文市長が掲げるスローガンは「小さくとも輝く都市へ 選ばれるまちみやづ」。
その核にあるのは、「行政と市民、そして地域外の人々が手を取り合い、共に新しいものを創っていく関係性こそが、まちづくりの基本である」という信念です。
家業である織物会社の経営に携わりながら、自ら地域活動を立ち上げてきた城﨑市長。一住民からまちのリーダーへと歩んできた軌跡と、宮津市が目指す「共創」の未来について伺いました。
団体の「解散」と「活性化」の双方を経験し、一住民から行政と地域をつなぐリーダーへ
―城﨑市長は市長に就任される前、家業の織物業を営みながら地元の自治会や青年団、消防団などに長く在籍されていました。当時の地域の状況や、活動の中でどのような経験をされてきたのでしょうか。
城﨑市長:私が家業の織物会社を継いで地域に関わり始めた20代半ばの頃は、繊維業を営む「はたや(機屋)」がたくさんあり、様々な機業組合や自治会など地域の活動も活発でした。
しかし、10年、20年と経つうちに会員数は減り、20〜30人いた団体が4〜5人になって解散していく。そんな場面に何度も立ち会ってきました。
地域の支援団体がなくなっていくことで地域の力が落ち、元気が失われていく現実を肌で体感した一人だと思います。
― 地域が衰退していくなかで、同世代の仲間と共にイベントを立ち上げたそうですね。
城﨑市長:当時は、人口減少や少子高齢化が足元に迫っているという強い危機感がありました。「なんとかしなければいけない」という思いから、地元の府中実業会青年部の仲間4〜5人と一緒に、冬花火大会や竹灯篭イベントなどを一から企画しました。
―団体の解散という地域の「衰退」と、「活性化」の両面を経験して、得たことは何だったのでしょうか。
城﨑市長:自分たちでイベントを立ち上げてみると、地域の方々にすごく喜んでもらえました。「自分たちで動けばリアクションがある、地域は変わる」という大きな手応えを得られたことが、まちづくりの原点になっていると思います。
一方で、住民や民間だけ、あるいは行政だけでまちづくりを進めることの限界も感じました。地域活動を持続可能な形で維持していくためには、行政と市民がしっかり手を取り合い、共に新しいものを創っていく関係性を築くことが必要不可欠だと考えるようになりました。
― 市議を1期務められたあと、市長になられました。市長になろうと思ったきっかけはあったのでしょうか。
城﨑市長:正直、自分が市長になるとは思っていませんでした。市議になったのも、民間だけでまちづくりをするのではなく、行政と連携していくために、民間と行政をつなぐ役割が必要だと感じたからでした。
市議になってからも、代々行政出身の市長が続いていた宮津市において、「人口が減少し縮小していく時代だからこそ、議会や民間の感覚を持つ首長が必要なのではないか」と同期の議員たちと議論していました。
その後、様々なタイミングや巡り合わせが重なり、「宮津市のためにもう一歩できることに挑戦してみよう」と腹をくくって、市長選に手を挙げさせていただきました。
―就任後、市民との対話を重ねてこられたと伺います。共創によるまちづくりを進めるうえで、大切にされていることは何でしょうか。
城﨑市長:市民の声をいかに聴くか、拾い上げるかです。「聞く」ではなく「傾聴」、深く聴き取ることが一番大事だと思っています。
就任以来、できるだけ自分から市民の皆さんのところに出向いて、直接声を聴く場をたくさん設けてきました。
ただ、こちらが場を作っても、来てくださるのが同じ年齢層や性別に偏ってしまうという難しさもあります。若い方や子育て世代、障害のある方など、幅広い声をどう聴いていくかは、8年やってきてもまだまだ足りていないと感じています。それでも、まず「聴く」ことが共創の第一歩ですので、そこを一番大切にしています。
混ざり合い、つながり、共に創る。まちづくりの輪を、まちの中から外、そして未来へ

―「行政と市民が共に創るまちづくり」の実装として、まずは“まちの中でつながる拠点”として「前尾記念クロスワークセンターMIYAZU」を開設されました。この場ができたことで、まちや市民にどんな変化があったのでしょうか。
城﨑市長: 着想したのはまさにコロナ禍の真っ最中でした。人と人との接触が制限される中で、リアルの対話やオンラインを通じてコミュニケーションを取ることの尊さを痛感したのがきっかけです。
クロスワークセンターのコンセプトは「混ざり合う」こと。都市部と地方だけでなく、異なる世代や地域が混ざり合い、掛け算によって新たな価値が生まれる場所を目指しました。
特に大きな成果は、スタートした当初から10代の高校生たちが集まってくれたことです。若い世代が楽しそうに集まる姿をみて、大人やアクティブな中間層も「ここに来たら面白いかもしれない」と惹きつけられ、自然と多様なコラボレーションが生まれる良い循環ができています。
―まちの中で混ざり合う手応えを得て、“まちの外の人とつながる”取り組みにも力を入れていらっしゃいます。
城﨑市長: 日本全体の人口が減る中で、従来の「移住定住」だけに頼るのは限界がありますし、コストもかかります。これからは、「ふるさと住民登録制度」をはじめとする関係人口の創出が未来の突破口になると確信しています。
宮津市では、国に先駆けて宮津ふるさと市民制度「MIYAZUTTO!」を立ち上げ、運用しています。これは、高校卒業後に進学や就職で一度まちを出た若者やまちにゆかりのある方々に、リモートや定期的な帰省などを通じて、宮津に関わり続けてもらえる仕組みです。
―今後、関係人口とどのような関わりを深めていきたいですか。
城﨑市長: 今後はさらに一歩踏み込んで、企業や地域外の方々にも深く入り込んでもらうべく、「草刈り」レベルでの具体的な関わりを創出したいと考えています。
高齢化が進み、例えば「自分たちだけでは草刈りができない」という場所に、月1回でも来て一緒に汗を流し、地域の人と一緒にご飯を食べて帰る。住民票は宮津になくても、関わる機会をつくることで「自分もこの地域の一員だ」「宮津が好きだ」と言ってくれる人を増やしていきたいです。
共に地域を動かすという地域側のマインドセットも含め、この共創の輪をどこまで広げられるかが、今後の鍵になると考えています。
―さらに“未来の担い手につなぐ”施策として、小中高を接続させた教育の場となる放課後探究スクール「Q-port」を立ち上げられました。立ち上げの背景には、どんな思いがあったのでしょうか。
城﨑市長: 幼少期から地域との関わりの中で学び、まちへの愛着を深めてもらうため、市でコーディネーターを配置し、小中一貫教育の実施に加え、2026年4月からは放課後探究スクール「Q-port」を開塾しています。
「Q-port」もまた多世代が交わり、学び合える機会づくりを大事にしていて、高校生が小中学生の探究活動をサポートすることで、中学生は高校での学びをイメージでき、高校生自身も教えるプロセスの中で深い気づきを得られるという相乗効果、「学び合い」が生まれています。
さらに嬉しいことに、宮津の高校を卒業して都市部の大学へ進学した子が、リモートで「Q-port」の中高生をサポートしてくれる事例が生まれています。宮津市には大学がないので、「進学でまちを離れても、地域の教育や未来に関わり続けられる」という小中高大の循環が動き始めています。ゆくゆくは市外の大学との連携体制を強化し、進学してもずっと宮津と関われる環境を定着させたいと考えています。
― そうして共創の輪を市の外へ広げていくうえで、宮津に関わってくれる企業や個人といったパートナーの存在も欠かせません。外から関わるパートナーには、どのようなことを期待されますか。
城﨑市長: 一番は、「宮津が好きだ」と言ってくれる人と一緒に、面白いことをやりたいです。
宮津の人、食、景色、雰囲気――
きっかけは何でも良いんです。
まずは宮津を好きだと思ってくれる企業や個人の方と一緒に、いろいろなことができればと思っています。
単にビジネスとして関わるだけでなく、宮津に入り込んで、同じ目線で一緒にまちづくりをしてくれるパートナーが増えていくと嬉しいですね。
3期目は「結果を出す4年間」。誰もが笑顔で暮らせる宮津の未来へ
―現在3期目を迎えられています。この任期中に成し遂げたいこと、そして宮津市の今後のビジョンについて教えてください。
城﨑市長: 私にとってこの3期目の4年間は、これまでの取り組みを目に見える成果として結実させる「結果を出す期間」です。一つは、これまで育て、つないできた人が戻ってこられる「働く場」の創出です。「いつか宮津に帰りたい」「関わり続けたい」と思ってくれる若者のためにも、受け皿となる「働く場所の創出」に本格的に取り組んでいきます。
もう一つは、外から人を呼び込む取り組みです。現在進めている「道の駅のリニューアル」などを通じて、市外からより多くの人に来てもらい、まち全体を回遊してもらえるように、共創の輪を、実際に人が行き交う動きに変えていきます。
人口減少を止めることは容易ではありませんが、人口が少なくなったとしても、ここに住む人々が「宮津に住んで良かった」と笑顔で暮らせることがまちづくりの基本です。
宮津を好きだと言ってくれるパートナーや住民の皆さんと手を携え、多様な人が混ざり合い、会話や笑顔があふれる「共創のまちづくり」をこれからも推進していきます。
※この記事は2026年10月時点の情報です。
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