人口減少や少子高齢化が進むなか、「若者や子育て世帯を巻き込んだまちづくり」を掲げ、SNSでの情報発信や独自のシティプロモーションに力を入れる自治体が増えています。一方で、多くの現場から聞こえてくるのが、「フォロワー数やWebサイトのアクセス数といった表面的な数字は伸びているのに、関係人口や移住・定住への手応えが感じられない」という声です。
「プロモーションの効果が見えにくい」「イベントを開いても、集まるのはいつも同じ顔ぶれ」。こうした課題の背景には、情報発信の現場と、実際のまちづくりの現場が分断されているという、構造的な問題があります。
表面的な数字に一喜一憂する広報から抜け出すには、住民が「情報の受け手」から、自ら意見を持ち、やがて地域の活動を立ち上げる「主体」へと変わっていくプロセス(ファネル)を可視化する仕組みが欠かせません。それは同時に、予算編成や事業の継続判断に向けて、「何にどれだけの予算を投じ、どのような成果が生まれたのか」を説明する取り組みでもあります。
北海道美唄市でも、シティプロモーション事業において同様の課題を抱えていました。
本記事では、美唄市で実践した「ファネル戦略」と、現場での具体的な取り組みを紹介します。
「見えている数字が、成果に結びついているか分からない」
美唄市は、ブランドまちづくりを進めるなかで、ブランド認知度や各種SNSの数値、イベント参加者数といった指標は取得できていました。しかし、それらが実際に住民の行動変容や街への関与にどう結びついているのかを、評価できていませんでした。
さらに、活動に参加していない住民からは、「身内だけで盛り上がっているように見える」という声も聞かれるなど、発信の数字は積み上がっても、まちづくりの実態とのつながりが見えないという課題を抱えていました。
住民の「状態」を可視化し、KPIを再設計する
そこで美唄市は、まずは現状を客観的なデータで把握するため、住民アンケートを実施しました。
その結果、美唄市のブランド認知率は60%を超えていることが判明した一方で、「まちづくりに関心はあるが、実際の活動に参加したことはない」という層が全体の61.0%を占めていることが分かりました。
ここで初めて、「関心を持った市民が、実際の”行動”に移るための仕組みが不足している」という真のボトルネックが、データによって浮き彫りになりました。
そこで、住民が情報に触れてから主体的な活動を起こすまでのプロセスを「関与ファネル」として整理。
市民の状態を「認知」「関心」「意見」「参画」「共創」「創発」の6つの階層で定義し、定量的に把握する仕組みを構築したのです。
重要なのは、評価の軸を転換したことです。
「年に何回イベントを開いたか」といった『行動量』ではなく、「住民がどれだけ主体的に行動するようになったか」という『行動変容』を評価の中心に据えました。
具体的には、周囲と協力して企画に加わる「共創」層と、自ら活動を立ち上げる「創発」層を合わせた「活動人口」を事業のKGIに設定し、住民アンケートを通じて継続的に測定することとしました。
ターゲットを絞り、実行まで「伴走」する
ファネル分析により、そもそも情報が届いていない未認知層には、デジタル上の発信だけでは届かないという課題も見えてきました。そこで、市内の自治会を中心に42団体を直接訪問し、対面で事業説明を行うという地道なアプローチを重ねました。
そして、最大の課題であった関心・意見層を、参画・共創層へと引き上げるため、「実行まで伴走するワークショップ」を主軸に据えました。
これまでのワークショップでは、市民からアイデアが出ても、日常に戻るとそのまま立ち消えてしまうことが少なくありませんでした。そこで、接点を持った市民に対して決して”やりっぱなし”にせず、「具体的にいつ、どうやって実行に移すか」を共に考え、プロジェクトの立ち上げから実行まで事務局として泥臭く伴走しました。
その結果、高校生によるごみ袋のデザインや、住民主導の農業体験イベントなど、市民自らが主体となって形にした企画が、いくつも生まれています。
「活動人口」は目標3.0%に対して5.5%を達成
データに基づくファネル設計と、ターゲットを絞り込んだ地道な伴走を重ねた結果、令和7年度には81件の活動が創出され、のべ2,100人が活動に参加しました。
最上位指標である「まちの活動人口」は、目標3.0%に対して実績5.5%を達成。地域活動のプラットフォームであるBBM(Bibai Beautiful Movement)の登録者数は、市内133人・市外85人の計218人*に達しています。
*R8年6月現在
「イベントを何回開催したか」ではなく、「住民がどれだけ主体的に動いたか」を測る。この視点の転換は、補正予算の編成や次年度に向けた事業判断の場においても、成果を説明する確かな根拠となります。
今後の展望
一方で、データ分析からは、依然として住民の61.0%の大多数が関心層に留まっていることも明確になっています。次なる打ち手として、この層を動かすために参加ハードルを極限まで下げる仕掛けを、現在開発・実装中です。
住民が今どのような状態にあるのかをデータで正確に捉え、そのフェーズに応じた最適なアプローチを展開していく。この「ファネルに基づく戦略的な検証サイクル」を回し続けることこそが、表面的な数字の呪縛を解き放ち、地域を支える関係人口・活動人口を本質的に育てていく、再現性のあるアプローチだと考えています。
【無料相談会のご案内】
このアプローチは、美唄市に限らず全国の地方自治体で再現可能な手法です。
プロモーションの「やってる感」から脱却し、成果を可視化する仕組みづくりにご関心のある自治体のご担当者様は、ぜひお気軽にFoundingBaseまでお問い合わせください。
現状の把握から、KPI設計、現場での実行・伴走まで、まちの状況に合わせてご支援します。
※この記事は2026年06月時点の情報です。
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