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kii+と町の「共創」事例!〜子どもたちを影で支える町の人々の想い「農家民宿 みっちゃん」〜

 私たちが、各地域で実際に事業を進めていく中で、とても大切にしているスタンスが、「地方共創」です。アドバイザーでもコンサルタントでもない私たちは、一人のプレーヤーとして実際に地域に移り住み、モノ・サービスの創造や活用といった地域経済を創り出すことに取り組んでいます。

 今回ご紹介する事例は、岡山県吉備中央町で運営している「町営塾kii+」のスタッフがあるきっかけで知り合った農家民宿「みっちゃん」のオーナーである田中美津子さんのお話です。
  kii+では、日々勉強に取り組んでいる生徒のお腹を満たすべく、おにぎりやパンの軽食を提供しています。この軽食を提供してくださっている方々のうちの1人が、「みっちゃん」こと田中美津子さんです。
  私たちはこの軽食を通して、「少しでも地域のものに触れてほしい」という思いから、「この地域ならでは」のものを大切にしているみっちゃんに協力していただきたいと思い、軽食の提供をお願いしました。

  農家民宿を初めて5年のみっちゃん。今回は、みっちゃんのこれまでの人生や、農家民宿の経営においてどのようなことを大切にしてきたのか、またどのような思いを持ってkii+の活動に協力をしていただいたのかについてお伝えします! 

 「お花屋さん」から「お弁当屋さんのみっちゃん」へ  

 長らく吉備中央町でお花を作られていたみっちゃん。パートさんを6人雇ってお世話をするほど大きな花農家さんだったそうです。そんなみっちゃんは、お友達のある言葉により「お花屋さん」から「お弁当屋のみっちゃん」へと転身します。
  もともと料理が全くできなかったみっちゃん。お花屋さんの傍ら、お弁当やおはぎを作っては趣味の範囲で近所におすそ分けをしていたそう。するとある日、お友達から「包んでシールを貼ったらお店に出せるよ」と言われたのです。その言葉を聞いたみっちゃんは、近所の人たちに自分が作った料理の味見をお願いし、アドバイスをもらいながら試行錯誤を繰り返しました。そして、独自のあんこや蓬団子を完成させました。
 みっちゃんは、「人の意見をなんでも鵜呑みにしたらいけん。自分でやってみないと。」と言っていました。お友達に「できるよ」と言われてからもなお、自分の力でよりよいものを創り出すということをずっと大切にされているそうです。これは、現在の民宿経営にも繋がる、みっちゃんの大事な考え方だと思います。

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 みっちゃんの農家民宿との出会い

  町が農家民宿のプロジェクトを立ち上げる時に、「農家民宿をやってみないか」と誘われたみっちゃん。当初は乗り気ではなく何度か断ったそう。しかし、担当の方の熱い想いに心を動かされて協力することに。「自分のできる範囲で」という気持ちで始めた農家民宿でしたが、海外のお客さんが気に入ってくれたり、リピーターができたりと、今ではすっかり農家民宿の魅力にはまっているそう。「英語は話せないけど、翻訳機を使いながらコミュニケーションをとっている。相手のことが分かるのが楽しくて。」と笑顔のみっちゃん。
 今でこそ新しいことにどんどん挑戦しているみっちゃんですが、幼少期は引っ込み思案でおとなしい子だったようです。しかし、この吉備中央町に嫁ぎ、色んな人と関わりながら様々な経験をしていくうちに、「やってみよう」が増えて好奇心旺盛になっていったそうです。
  そんなみっちゃんは、お花屋さんをしていた頃に「園芸福祉」の資格をとるために勉強を開始。「やってみよう」という思いでとにかく挑戦し、日々新たな発見を繰り返しているみっちゃん。民宿のメニューも、テレビで見たものやコンビニの新商品から着想を得て、自分でアレンジしているそう。みっちゃんの料理には、「やってみよう」という好奇心や、「お客さんに喜んでもらいたい」というあったかい気持ちが詰まっています。

写真②

 「kii+の生徒のために」みっちゃんの想い 

 kii+スタッフが軽食のお願いをした時、みっちゃんはすぐに協力を受けてくれました。「その人の想いが一番大事」と言うみっちゃんは、当時のスタッフの想いを聞いて協力を決めたと話してくれました。  軽食の提供をお願いした当初は、大きいおにぎりが1つでした。しかし、「勉強の合間に食べるんだったら」と少し小さめのおにぎりを2つに変更してくれました。
  スタッフは毎回、みっちゃんの軽食を受け取りに行き、その時には生徒の好みや感想をできるだけ伝えるようにしています。それを聞いたみっちゃんは、「梅干しみんな好きかと思って入れたけど、自分の孫だけやったわ。」と言っていたり、「のりも付けようか迷ったんよ。安くするならない方がいいけど、みんな欲しいかなと思って。」と言って、次はのり付きのおにぎりを用意してくれたり。顔の見えない生徒のことを想像しながら「どうすれば喜んでくれるかな」と考えてくれています。
  軽食を通して「吉備中央町ならではの食材に触れてほしい」という想いを持っているみっちゃん。今は、おにぎりの具を固定していますが、「この時期なら大根の葉っぱご飯。ジビエも手に入ったら入れてあげてもいいね。」など、生徒のお腹を満たすだけではなく、軽食を通して「吉備中央町のよさ」に気づくことができるようにと考えてくれています。 

写真③

 みっちゃんが大切にしていること 

 お花屋さん、お弁当屋さん、そして農家民宿の経営と、たくさんのことを経験されてきたみっちゃん。「お弁当や商品は後からついてくるもの。まずは、自分と相手の関係をつくることが大事」。この言葉にみっちゃんの想いが全て込められているのではないでしょうか。相手(お弁当を食べる人、民宿を訪れる人、kii+の生徒)がどんな人なのかを考えながら、準備をする。それが楽しくて、ワクワクする。庭先で育てている季節の野菜や、吉備中央町で採れた食材を使ったお惣菜に、低農薬のお米。相手の顔を思い浮かべながら、この土地ならではの食材を生かしたメニューを、日々考えているのです。 
 みっちゃんは、お弁当の注文や民宿の予約を受ける際に、必ず「年齢、性別、シチュエーション」を尋ねるそう。初めての人はもちろん、お得意さんであってもです。それは、決まっているメニューに相手を合わせるのではなく、「どうしたら喜んでくれるのか」をもとに、相手に合わせてメニューを決めているから。「どんなに美味しい料理でも、その人との関係がないと意味がない。」みっちゃんの料理はみっちゃんの想いをそのまま表現しているから、「ほっ」とするのかなと思います。
  このように、直接関わりのある人だけでなく、影で生徒の成長を支えてくれている町の人がいます。そんな町の人々の想いがあるからこそ、kii+は成り立っているんだと感じています。今日もkii+の生徒は、みっちゃんの想いがたっぷり詰まったおにぎりを食べて、元気に活動しています!! 

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