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『地方には仕事がない』は都市伝説!? 地方移住者30人に密着取材して分かったこと

昨年、2022年8月31日に「挑む移住者たち」というYouTubeチャンネルを立ち上げました。都会と同じように「地方で生きる」という選択が当たり前になる。そんな世の中を作ることが目的です。仕事がない、人がいないというイメージが先行している地方ですが、実際どうなのか?
約9カ月で北海道から大分県まで日本全国を飛び回り、各地に暮らす移住者さんへの取材を通して分かった発見を共有します。

挑む移住者たちのより詳しい説明や運営メンバーについてはこちら!

1.「人口2400人の小さなまちでも、選べるくらい仕事があった」

関西のほぼ最南端に位置する和歌山県古座川町。増山清人さんは2017年にこの町に移住してきた。東京都葛飾区で生まれ育ち、移住前は妻と子どもと東京で暮らしていた。移住のきっかけは子どもができたタイミング。子育てにあたり、自然豊かな環境を求めて妻の故郷・古座川町に移住してきた。

当初は「生活に必要なお金が十分に稼げる仕事は地方にはないだろう」というイメージを持っていたという増山さん。しかし、実際のところはハローワークの紹介で移住促進の仕事がすんなりと決まり、移住に踏み切った。東京では建設会社の営業職として働いていた増山さん。当時と比較すると給料は下がったが、家賃や食費等の生活コストがかなり下がったため、東京にいた時と同じくらいの貯金もできているという。

現在は転職して古座川町観光協会で町のPRをしている彼。
地方移住を通して知ったことは、表に出ていない求人がかなり多いということ。
都会のようにタウンワークやバイトルのような求人サイトには仕事は載っていないが、ハローワークには情報があることや、人を雇いたいが公に告知していない会社が多いという。

お子さんはまだ保育園児

都会ほどは選べないが、仕事はかなりある。不足しているのは人材で、老若男女問わず地方で暮らしていけるだけの収入を得られる仕事はあるというのが実際のところだという。

東京で暮らしていたときは、高い生活コストへの切迫観念が常にあったと言うが、今はそれもなくなったため、仕事を楽しむことができるようになったと話す。

現在の夢は「古座川町が〇〇で有名な町だ」と自分の子どもが将来町を出た時に自信を持って語れるように、古座川町のブランディングを成功させること。

美しい海や河川といった観光資源に加え、アップダウンの激しい入り組んだ山道が国内でも有数の自転車競技のコースとして近年注目されている古座川町。そんな町のPRを担う増山さんの活躍に期待だ。

2.「「いつかやりたい」仕事が「今」叶えられる町があった」

北海道上川町(2月に撮影)

札幌から特急列車で約2時間、北海道の中央部に位置する上川町に移住した小山内夫婦。以前は名古屋で夫の力さんは土木業、妻の沙紀さんは飲食業の会社で働いていた。30歳で夫の力さんが土木の仕事を退職したことをきっかけに、今後生き方を考え直した結果、「いつか二人でやりたいね」と話していたホットドック屋を始めようと決意。

上川町に移住した小山内さん

当初は旅行で数回訪れていた岡山県が第一候補だったというが、町から固定給をもらって飲食店の開業準備を進められる地域おこし協力隊の制度が利用できることから、北海道上川町(人口3200人)に移住を決めた。
▶地域おこし協力隊とは?(総務省)

全く身寄りのなかった北海道だが、町からのサポートを受け2年間の開業準備の後、2022年4月にお店をオープン。

人口規模も小さく、人通りも多くないこの町で果たして経営は成り立つのだろうか?

お店をオープンして分かったことは、地方には需要はあるのに供給がないことが多いということ。近隣の町を含めてもホットドッグ屋はなく、気軽に立ち寄れるカフェや喫茶店も少ない。
「お昼よりも夜の方がお客さんがたくさん来て賑やかです」
小山内さんはお店の広さも活かして昼はホットドッグ屋兼カフェ、夜は居酒屋と町に供給がないものを組み合わせると、人口の少ない町でもお店の経営は成り立ったと話す。

ホットドッグを作るふたり、夫婦ふたりで営業中

また、近隣の飲食イベントに出店したり食品加工販売も行ったりと「仕事が多く忙しくて大変だけど、仕事を作っていけるのは楽しい」と話す二人。

人口規模が少ないエリアであっても町の特徴に合わせれば、地方でお店を経営していくこともできるんだという発見があった。

3.「人に誇れる仕事があった」

新卒で入社した不動産会社を1カ月で辞めて、栃木県大田原市に移住した片岡さん。
一体何があったのかと聞いてみると、前職の不動産会社でしていた業務内容が「人に迷惑をかけている気がして引け目を感じ、辞めた」とのこと。マンションを訪問営業で販売する方針の不動産会社だったため、18時以降に帰ってくる会社員をターゲットにピンポンを押して都内を駆け回る日々に、「違和感」を感じていたという。

当初は「多少大変なことをしてでも、早くからお金を稼ぐ力を身に着けたい」と、この会社に入社したというが、自分には合わなかった。

そんな中で「人に誇れる仕事がしたい」という軸で仕事を探したところ、栃木県で植林専門の林業会社に出会う。「未来の森を今作る」という会社のミッションに共感し、もちろん林業の知識はゼロだったが、飛び込んだ。

片岡さんの仕事はというと、当の本人が「地味だ」と話すように、木を植えるというシンプルなもの。しかし伐採量が増加する業界動向の中で、木を植えることが将来的な森の存続に貢献できる点や、動物や植物などの生態保護にもつながるといった点、なによりも眺望の良い広大な森で働けることが気持ちがいいと、心から「今の仕事が楽しい」と話す。

前職に就職した時、「仕事はお金を稼ぐことであって楽しさと結びつけることではない」と考えていたというが、「今はお金も稼ぎつつ、楽しいと思える仕事を見つけられたから自分は幸せ者だ」と話す片岡さん。

自身のキャリアを決める際、どうしても世間体や、経済的、社会的な安定を意識してしまい、なかなか自分の本心に素直な選択ができないという方も少なくないと感じます。

そんな中で片岡さんの選択は素直そのもの。
もっと自由に生き方を選んでも良いんだと気付かされました。

4.「映像を通して伝えたいのは多様な生き方」

これまで取材してきた移住者たちに共通しているのは、理想の生き方を追求した結果、地方に行き着いたということ。本記事で取り上げた移住者3組も、元々は都会で暮らしで、特に地方移住がしたかったというわけではなかった。

そんな中で地方を選んだのは、都会と比較できるほど地方での生き方に魅力を感じたからだろう。

都会は職業や住まいの選択肢が豊富なうえに、利便性が高い。一方で賃料は高く、何かと競争が激しい。それに比べ地方は比較的賃料は安く、都会に比べると競争も少ない。
地方で「空き家が増えている」「人が減っている」というニュースはよく耳にするが、反対にそれが経済的なメリットをもたらしているのも現状だ。マイナス面でもあるが、それをプラスに変換できれば移住者たちのように地方を「挑戦の場」として捉え、「自己実現」をしつつ、縮小傾向だった経済や人の動きを取り戻そうとする方もいる。

私達は地方移住する人を増やしたいのではなく、生き方の選択肢を増やしたい。
現状では都会優位に捉えられがちな世の中であることに違いはないが、都会と同等に地方での生き方も比較されるような社会になれば、より自由に生き方を選べ、個人の人生がより豊かになると思っている。そうなれば、都会と同じように地方を選ぶ人が増え、都会と同じように地方でも面白い取り組みが始まり、人口は増えずとも都会と地方、双方に関わる人が増え、互いに発展していく。そんな未来が待っていると信じている。

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