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2016.08.03

【プロジェクト】『まるごと津和野マルシェ』の誕生のひみつ


津和野(つわの)をまるごとお届けする朝市『まるごと津和野マルシェ』

 

3年前の2013年から始まり、今では定番となった津和野町の特産物が集まる朝市『まるごと津和野マルシェ』。この取り組みを企画したのは現在FoundingBaseの社員である坂和貴之でした。

 

 


FoundingBaseプログラムの第一期生として津和野へ

1990年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2012年に大学を休学し、島根県津和野町で新規就農者を増やすための企画運営を行う。現在はFoundingBaseの社員として岡山県吉備中央町のマネジメントを担当。

 

坂和さんは、FoundingBaseプログラムの第一期生として2012年から14年にかけて津和野町に滞在し、役場の農林課に所属してまちづくりの活動を行ってきました。大学在学中にも積極的に東京から地方に通って活動をしていたそうですが、一方で「本当に町の人達の為になっているのか。独りよがりなのでないか」という思いもあったと語ります。

 

「もう一度町づくりをするのであれば、その地域に住んで、本気で取り組みたい。」

 

そう思った彼は大学を休学し、FoundingBaseプログラムに参加。それまで都会の大学に通っていた青年が、大人に交じって町の役場で働く日々が始まりました。そして、一年目から「農家の後継者不足」という町が抱える大きな問題に向き合うことになります。

 

当時、「過去5年間の新規就農者が0人」という数字を突きつけられていた津和野町。坂和さんは「新規就農者を増やすためにも、まずは農業に興味を持っている人が、気軽に津和野町に来てくれることが重要」と考え、「1泊2日の農業体験ツアーを6ヶ月間連続で開催する」というアイデア出します。そして、県外から来たツアー参加者に、農業の季節における仕事の変化を見てもらう事にしました。そしてツアーを大好評の内に終えたところ、なんとその中の1人がわさび農家として町に移住することに。過去5年間で0だった新規就農者数が1になったことは、町民の意識に大きな変化をもたらしました。

 

 


新規就農者獲得に向けて更なる課題に挑む

 

一方で、就農者が少ない最大の要因は「所得が低い」こと。そこで役場の中で協力者を集って新しいチームを作り、「農家の所得向上」とそれに合わせた「新規就農者の増加」の取り組みを始めました。

 

販路拡大を考えた時にまず目を向けたのが、津和野町の観光客です。津和野は年間約100万人の観光客が訪れる観光名所でもあり、坂和さんは「観光客に津和野の新鮮な野菜をお土産として持ち帰ってもらう仕組み」を考えることにしました。その考えは、「朝市を開こう」というアイデアに繋がっていきます。

 

しかしながら、この仕組みを作るには一つ大きな課題がありました。それは津和野町内にある2つの地域を結びつける必要があるということ。

 

今の津和野町は、2005年に旧津和野町と旧日原町とが合併して誕生しました。野菜の直産市は既にそれぞれの旧町単位で行われており、観光客を対象とした新しい朝市を作るにも、まずは各地域の人達としっかり話し合い、流通システムを新しいものにしてもらう必要がありました。そして、まちづくりの取り組みにおいて、こうした既存の仕組みを新しいものにしていく事こそが最も困難なことになります。

 

様々な立場・考えを持つ農家の方々と、ルールや仕組みについて幾度も細かい調整を行なった上で、新しい朝市『まるごと津和野マルシェ』は誕生しました。マルシェのロゴには2つの地域を結び合わせるという意味が込められており、ひとりひとりの「自分ごと」が集まって出来る朝市にしたいと考えています。

 

 

マルシェのグラフィック・デザインは、株式会社minnaさんに手がけて頂きました。このデザインは、第48回SDA賞『空間・環境表現サイン部門 入選』や『中国地区 地区デザイン賞 受賞』、DSA空間デザイン賞2014『ショーウィンドウ&ヴィジュアルデザイン空間 入選』など、様々な評価をいただくことができました。

 

株式会社ミンナ

【みんな】のために【みんな】のことを【みんな】でやるをコンセプトに、グラフィックやプロダクトなどのジャンルにとらわれず、領域を越えて幅広く作品を手がけるみんなのためのデザインチーム。

 

 


プロジェクトを進める際に大切にしたいこと

前述したように、マルシェを開催するまでには様々な壁がありました。しかし、坂和さんは「ここでしっかり成果を残さなければ、自分が来た意味がない」と、懸命に自分の考えや想いを町民に伝えていきました。

 

マルシェに出す野菜を提供してもらうにあたっては、地元の農協OBの方が一軒一軒顔つなぎをしてくれ、合計100件以上の農家を訪問することが出来ました。紹介を受けてからは定期的にマルシェ開催のご案内をするなど、こまめに連絡を取り続け、一人一人と信頼関係を築いていきました。

 

ある農家さんからは「パソコンに不具合があって困ってるんだけど」と深夜1時に電話があり、すぐに出向いて深夜4時までかけて対応したこともあったそうです。こうした地道な活動が積み重なることで徐々に協力者が増え、最終的には70以上の農家の方々にマルシェの会員となって頂くことが出来ました。

 

現在、まるごと津和野マルシェは町の第三セクターに引き継がれ、運営されています。時には津和野以外の場所でも朝市を開催して欲しいと声がかかり、「出張マルシェ」を行うこともあります。FoundingBaseのキーマンたちが作ったプロジェクトがこのように引き継がれ、継続して町の人達に愛されていることを私達としては何より嬉しく感じます。

 

また新規就農者の募集に関しても、役場の職員が中心となってIUターン者の受け入れを強化し、今では毎年10名前後の新規就農者が津和野にやってくるようになりました。

 

知識や経験がない青年であったとしても、強い想いを持ってプロジェクトに取り組んだ結果、新しい仕組みを作り上げることが出来たのです。

 

本気で町に関わっていく覚悟を持って地道に取り組むことができれば、きっと変化を起こすことができる。このプロジェクトには、町づくりにおいて大切にすべき要素が沢山詰まっています。

 

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〔出張まるごと津和野マルシェ@東京・目黒区(一番右が坂和さん)〕

 

 

(弘重裕子)

 

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