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2018.01.10

【プロジェクト】西和賀高校学校案内作成


プロジェクトの始まり

2017年4月。僕ら(早川大輝・西村海星)は地域おこし協力隊員として西和賀町に着任し、町による『西和賀高校魅力化プロジェクト』が本格始動しました。

 

始動したと言ったものの、僕らの役割は「西和賀高校の魅力化」と大枠が決まっていただけでした。西和賀高校のことも何も知らない。そもそも西和賀町に縁もゆかりもない。そんな状況で、2週間ほど漫然とした日々を過ごし、やっと与えられた仕事は『中学生向けの学校案内』の作成でした。学校案内は、各高校が1人でも多くの志願者を集めようと趣向を凝らしています。

 

率直に言うと、僕らにはある想いがありました。「学校案内を作りに西和賀町に来たつもりはない」というものです。教育に関心があり、地域から教育の新たな形を作りたいと考えていた僕らにとって、大学を休学してまで西和賀町に来たにも関わらず、『学校案内の作成』という役割のみを割り当てられたことは、当初の僕らにとっては到底納得のいかないことでした。

 

とはいえ、やっと与えられた取り組み。これは高校の信頼を獲得する大きなチャンスです。高校に席もないのに、教育を魅力的にするだのと息巻いていても、何の意味もありません。まずは与えられた仕事をやり抜き、成果を上げて次の仕事に繋げる。求められていることを着実に達成していくことこそが、西和賀高校の教育そのものに関わっていく最短ルートなのかもしれない。2人はそう考え直し、学校案内の作成をスタートさせました。

 


『学校案内』とは何か。

作成をスタートさせるにあたって、過去の西和賀高校の学校案内を確認しました。担当の先生が、授業・部活・生徒対応・その他たくさんの業務を抱える中で作った学校案内。お世辞にも質の高い学校案内とは言えませんでした。トピック・文章・写真・配置・デザイン様々な面で課題を抱えていました。

 

何から取り掛かろうか。具体的な中身を考えるよりもまず学校案内が確実に手元にやってくる西和賀の中学生の意見を聞きたい。つまりターゲットへの調査を行いたい。西和賀高校についてどんなイメージを抱いているのだろう。なぜ町外の高校に行く生徒が増えているのだろう。それらを調査したいと考えて、町内に2つある中学校に協力を依頼し、3年生38名とその保護者38名にアンケート調査を実施しました。さらには町内在住で、すぐ隣の地方都市である北上市に通学する高校生にも駅前でヒアリングを行いました。

 

その結果わかったのは、町内の中学生にとって西和賀高校は「近いから仕方なく行く高校」 であること。人数も部活動も少ない。メンバーも中学校とほとんど変わり映えしない。「高校生活は新たな環境でチャレンジしてみたい」「これまでとは違った世界に飛び込んでみたい」と思う生徒は、町外の高校を選ぶ傾向があることが分かりました。一方、西和賀高校にはどこか負のイメージや固定観念を持っていることも分かりました。

 


西和賀高校の「イメージ」と「実際」の違い

それでは、実際の西和賀高校はどうなのだろう。そんなに負のオーラに溢れた高校なのだろうか。しかし先生方や在校生に話を聞く内に、外から見たイメージと内実は異なることがわかってきました。西和賀高校は生徒数が非常に少ない分、先生・生徒問わず非常に距離が近い。生徒も学年に関係なく、皆が名前を知っていて仲良くしているといった温かさもあります。しかも少人数で指導が手厚いからこそ、開花した才能があることも分かりました。

 

ある3年生の男子生徒は、高校から陸上を始め、最初の大会ではレースで最下位となってしまいました。彼はその悔しさを忘れず、また顧問の熱心な指導を着実に実力と変え、東北大会でも上位の結果を残すまでの選手成長していたのです。「正直近いからという理由で西和賀高校を選んだけれど、少人数の中で過ごしたからこそ本気になれるものが見つかった。」こう語る彼の真剣な眼差し。こんなにキラキラと輝く生徒が西和賀高校にいるのならば、学校案内に生かさない手はありません。

 


目的を追求し、良いものにこだわる。

こうして学校案内のテーマが「3年間で変化を起こせる西和賀高校」と決まりました。そしてキャッチフレーズは『呼び醒ませポテンシャル』としました。

 

そのテーマとキャッチフレーズをもとに、在校生や卒業生、先生へのインタビューを行いました。とにかく「生徒の生の声」にこだわりました。在校生や卒業生の、西和賀高校での「変化」のストーリーを載せることで、読んだ中学生に憧れを持ってもらう。記事を読むことで、「年が離れていない高校生が変わっていく様を追体験してもらい、自分も西和賀高校で変わりたい!と考えてもらうこと」を目指しました。

 

写真やデザインについては、それぞれ東京のプロの方々に依頼をし、撮影・編集を行いました。その過程で高校と意見が食い違うことも多々ありました。「尖り過ぎている」「こんなの学校案内ではない」といった高校からの意見がありました。もちろん学校案内作成の目的の1つには「高校の信頼を獲得すること」があったので、意見を取り入れることもありました。とはいえ、学校案内のそもそもの製作の意味に立ち返ると、目的は「中学生に関心を持ってもらうこと」です。だからこそ、高校側が政治的な意見や、中学生目線でない意見を提示してきたときには、ぶつかることもありました。もちろん摩擦も生まれました。このまま完成しないのではないかと思った日もありました。けれども「高校の学校案内だから」「中学生に配るものだから」「西和賀や北上でしか見られないから」「高校がそうしろと言ったから」といった妥協は決してせず、『本当に中学生の気持ちに響く学校案内』を追求する。その姿勢こそが、中学生の西和賀高校への関心・憧れとなり、負の固定概念を変えることに繋がると信じて、製作と議論を重ねました。

 


『学校案内』の完成!

そして6月中旬。これまでとは中身・外身両面とも大幅に変化した”新・学校案内”が完成しました。約2ヶ月を費やしての完成でした。

〔画像をクリックすると、学校案内のpdfがご覧いただけます〕

 

たくさんの反響がありました。中学生の娘がいる知り合いのお菓子屋さんは「西高どうしたんだー!(学校案内が)他の高校と比べても目立ってたぞ!娘もかっけえと言ってた!」と教えてくださり、中学校の先生は「ホームルームで配った時に、みんなその場で真剣に読みだしてましたよ」と言ってくださいました。本当に嬉しかったです。岩手の地方紙である岩手日報にも記事が掲載されました。

 


小さいけれど、確かな成果を刻む

学校案内を作成したからといって、高校の教育そのものにすぐに関われる事になったかといえば、そんなことはありません。けれども学校からの小さな、そして確かな信頼を獲得することができました。作成を通して、生徒・先生の距離は近づきました。何よりも、小さくても西和賀高校のイメージを変化させることができたのは、大きな成果だと思っています。リサーチをかけて、テーマ決めて、プロに協力をお願いして作り込んだからこそ生まれた、着実な変化の波。こうした波を絶えず起こし続けることが、次第に大きなうねりとなっていくのかもしれない。そう思うことのできた取り組みでした。

 

(文: 西村海星)

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